納得できたからそれですべてがチャラというわけにはいかない。そもそも、夫と彼女の仲は続いていたのだから。
「彼女も働いていたけど、子どもの学資や生活の不足分は夫が出していたようです。本当はそういう細かいことも夫の口から聞きたかった」
それでも日常生活は待ってくれない。思春期にさしかかっている
子どもたちに気取られないよう家事をこなし、会社での仕事もいつもと変わりなくおこなう日々が続いた。
「会社で夫と私が険悪になっているわけにもいきません。番頭格の社員は信頼できる人で、陰でいろいろ気遣ってくれました。日常ってすごいですよね。夫と例の件を話さなくても、なにごともなかったかのように仕事も家庭も回っていく……」

だからといって彼女が悩まなかったわけではない。
心の奥にいつも重りを抱えているような不快感がある。
「夫は、例の番頭格の社員から私も全部知ったと聞いているはずです。それでも何も言わない。彼女への支援も続いているんじゃないでしょうか」
きちんと話し合ったわけでもなく、何かケジメがついたわけでもなく、淡々と日常は過ぎていく。夫は以前と同じように子どもたちの学校行事にも出かけるし、夏休みは家族旅行もする。またあの話を蒸し返したら、
せっかく凪(なぎ)が続いているところに波乱を起こしてしまうのはわかりきっていた。
「だから何も言えない。家出も考えましたけど、私はもう両親もいないので帰るところがない。なにより子どもたちと離れたくないし、子どもたちを連れて出たら私も生活に困る。夫も私が出ていったら会社経営がうまくいかなくなることはわかっている。お互いの利害が一致しているような気もします。だから波風たてないでおこう、と」
夫が今も彼女と会っているのか、性的な関係があるのか、それもわからない。週に2、3回、仕事が終わると飲みに出かけるのも以前と変わらないからだ。ただ、少なくとも
浮気発覚以降、アキエさんと夫との間はセックスレスだ。

「それまでは週に1、2度はセックスしていたんですよ。私は夫のことが好きだったんだと思う。でも今は……わかりません」
夫を憎みきれないからこその葛藤と苦悩がアキエさんにはある。表面上はごく普通にふるまい、夫婦で出かけなければならない会合などには一緒に出席する。周りからは「相変わらず仲がいいね」と言われるが、そんなとき、アキエさんはふと虚しくなるという。
「最近ではもう考えることもめんどうになってきたので、このまま仮面夫婦でいいんじゃないかと……。子どもたちが成人して
夫が働けなくなったら会社を畳むなり誰かに譲るなりして、私はもらうものをもらって離婚したい。
そのためにも会社の業績は落とせないから、もう少し仕事の幅を広げていくつもりです。夫とも仕事の話はよくするようになりました。私の老後の費用を貯めるため、とは言えませんが(笑)」
毎朝起きると、「あと10年、がんばろう」とアキエさんは自分に言い聞かせる。結論はそのとき出せばいい。気持ちを切り替えて、彼女は今日も笑顔を作る。
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不倫発覚、その後。 Vol.4――
<TEXT/亀山早苗>
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