向井理(42歳)『パリピ孔明』から俳優の実力が試されるプレッシャーの舞台へ。声を出す観客も
『パリピ孔明』やハリー・ポッター、詐欺師の顔を持つ警察官まで幅広く
その一方で、その類まれなる頭身の高さを生かす、華やかな役もお似合いである。劇団☆新感線『狐晴明九尾狩』(21年)では最優秀陰陽師という役割で、紅白の小林幸子みたいなことになっても堂々たるもので、テレビドラマ『パリピ孔明』(23年)は現代に転生した諸葛孔明をやはり堂々と演じていた。 22年の8月から23年の5月まで長いこと演じていた『ハリー・ポッターと呪いの子』の大人になったハリー・ポッターも、ブリティッシュなデザインのコートやスリーピースのスーツをスマートに着こなしながら、決してビジュアル重視なだけではなく、三児の父になったハリーの大人の苦悩をリアリティーをもって演じていた。 淡々と粛々と役を演じながら、いつの間にか、デビュー18年、演技の幅が広がっている。WOWOWでSeason2が6月29日から配信されている『ダブルチート偽りの警官』のSeason1は、先日までテレビ東京で放送されていた。そこで向井は様々な顔をもった人物・多家良啓介を演じた。
演じ分けていますという大仰さがなく、どこか自然体
交番勤務の警察官として地域の人々に頼りにされる多家良は、実は詐欺師の顔を持っていた。かつては捜査二課の刑事だった多家良は、法の手では裁けなかった悪を詐欺によって裁いていたのだ。 人の良さそうな警官の顔と、詐欺師の顔、そしてそういう行動をとる本心とを、演じ分ける向井。だが、いかにも演じ分けていますという大仰さがなくどこか自然体で暑苦しくない。 彼なりのやり方で仕事を続けているところが実に尊い。 <文/木俣冬>
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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