愛とか寝ぼけたこと言ってるな!岩井志麻子が説く、“愛の正体”とは?
【本当の愛をめぐる冒険/第2回 作家・岩井志麻子Vol.1】
パートナーと10年付き合っているゲイライターの渋谷アシルが、「本当の愛とはいったいなにか」を追求する冒険に出発。恋愛や男女関係のスペシャリストたちに話を聞いてまわります。
第2回のスペシャリストは、作家であり、破天荒なキャラクターでタレントとしても活躍している岩井志麻子さんです。
自身も結婚・離婚を経験し、さらには海外に複数の愛人を持つ岩井さん。「本当の愛の正体を探っているんです」と言いかけた途端、畳み掛けるように岩井節が飛んできてビックリ(笑)。
「みんな、愛という宗教、“愛教”に囚われすぎてますよ! そもそも、愛なんて概念はキリスト教が入ってくるまで日本には存在しなかったものじゃないですか。それまでの日本で愛に相当するものといえば、執着とか未練とか、あまりよくないものだった。そしてそれを断つのが、日本の大人の在り方だったのに」
もともと愛なんてものは、日本にはなかったでしょうと息巻く岩井さん。のっけから衝撃的な発言に固まってしまったわ。でも、それじゃあどうしていまの日本ではこんなに“愛の信者”たちが増えてしまったのかしら?
「愛情のカタチって、刷り込みによって構築される部分が大きいと思います。昔は母親とか祖母とか、村の人たちの姿を見て、愛とはどんなものか学んでいたんです。そこからドラマやマンガの登場で、さらに影響を受けるものが増えた。
わたしの世代だと、山口百恵さんの“赤いシリーズ”っていうドラマが大人気だったんですけど、いま見ると驚くような内容なんですよ。あるドラマで、三浦友和さんが山口百恵さんをバチーンと引っ叩くんだけど、それで百恵さんは『この人、わたしのことを本当に愛しているんだわ』なんて思っちゃうんです。いま、男が女を殴って愛とか恋とか言ったら大問題ですよね。でも、当時のわたしたちはそれを見てうっとりして、『わたしも彼に殴られたい』みたいな(笑)」
愛情のカタチは刷り込みによって構築されるもの。その人がどんなものを見たり読んだりしたかで変わってくるそう。そうね、ぼくもマンガやドラマを見て「こんな風に愛されたい」なんて思うこと、あるある!
「いまはネットがあるから、ドラマやマンガの情報だけを鵜呑みにするってことはないかもしれない。でも、逆に情報過多で裕福な生活が送れるようになったからこそ、みんな欲張りになっている側面もあるんですよ。
結婚にしたってそう。いまの人たちは愛情がなきゃ結婚できないとか言うかもしれないけれど、昔は家と家が釣り合った者同士が結婚するのが当たり前だったじゃないですか。愛とか寝ぼけたこと言っているなって感じで。それを疑うこともなかった。当たり前のことだったから、誰も疑問に思わなかったし。愛情って、時代が色濃く反映されるものなんですね。だからいまの人たちは、なにかといえば愛が欲しい愛が欲しいって口にする」
時代を経て、世代交代が進めば「愛情のカタチ・定義」が変わってくる。もしかしたらぼくたちは、恵まれているようで、逆に愛なんていう不確かなものに右往左往させられる大変な時代に生きているのかもしれない。
「それとね、愛情って“負け惜しみ”とか“言い訳”にも使われる常套句なんです」
え、愛を負け惜しみに使う? ……それってどういうことかしら!?
☆今週の格言:現代人はみんな“愛教”に溺れている
【岩井志麻子さん プロフィール】
作家。高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。『岡山女』『trai cay(チャイ・コイ)』『自由戀愛』など、著書多数。「エロくて変なオバちゃん」というキャラクターを活かし、テレビ番組でも活躍中。最新情報はtwitter:@omekoboshi_infoにてチェック。
<TEXT/渋谷アシル>
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【渋谷アシル プロフィール】
昼間は会社員の仮面をかぶった、謎のゲイライター。これまでお付き合いしてきたオトコをネタに原稿を執筆する、陰険な性格がチャームポイント。オトコに振り回される世の女性のために、ひとり勝手にPCに向かう毎日。
どうして“愛の信者”たちが増えたのか

情報過多な時代だからこそ、みんな欲張りに

渋谷アシル
昼間は会社員の仮面をかぶった、謎のゲイライター。これまでお付き合いしてきたオトコをネタに原稿を執筆する、陰険な性格がチャームポイント。オトコに振り回される世の女性のために、ひとり勝手にPCに向かう毎日。