●連載「ファッション誌が答えてくれない相談」48 by小林直子●
流行があるのはわかっていますが、自分の好みじゃないものもあって、取り入れたくありません。流行はいつも取り入れないといけないでしょうか?
A.流行のうち「好きなものだけ」取り入れるのが正解
ファッションとは変化なので、同じものがずっととどまっていることはありません。何が変化するかと言えば、色とシルエットです。

盛り袖ブームはまだ続きそう nano・universe ダブルフレアスリーブブラウス ¥8,640 画像:WEAR
まず色についてです。色にも流行があります。
今はやっている赤と、70年代にはやっていた赤は違います。
例えば高円寺あたりの70年代のものを多く扱う古着屋さんへ一歩入ってみれば、あれ、なんだか駅ビルのショップと色合いが違うなと、誰でもが気づくと思います。
あるいは、ご自分の子どものころの写真を見ると、ご両親が着ている服の色がなんだか今の色とは違いませんか?
それこそ白と黒以外は、赤も緑も茶も、今の色調とは違うでしょう。このように色にも明らかに流行がありますし、70年代の古着を見て「何か色合いが違うな」と感じるということは、多くの人が流行の変化に気づいているのです。

今はとにかくビッグシルエット!NOBLE タックボリュームワイドパンツ ¥19,440 画像:WEAR
次はシルエットです。
シルエットとは、自分の身体と服とのあいだの空気の量です。その空気の量が多ければビッグシルエットであり、少なければタイトシルエットです。
タイトの次はビッグ、ビッグの次はタイトというように、順番に繰り返され、常に変動していきます。
色とシルエットの組み合わせで流行の大枠が決まり、そこに付属や装飾など細部が加わることで、その年の流行ができ上がります。
タイトシルエットがはやっている時期はスキニージーンズが一番格好良く見えたでしょうが、ビッグシルエットが流行になった今、あの股上の浅い、ストレッチのきいた細いジーンズを今さらはこうとは思わないのが通常です。

数年前はピタピタのスキニーを履いてましたね…
この、変化する流行を完全に無視すると、おしゃれには見えません。どうしても時代から取り残された感じに見えてしまいます。
だからといって、流行をすべて取り入れなければいけないわけではありません。流行から取捨選択して、自分の好みのものだけを取り入れればいいでしょう。いくらロングコートがはやったからといって、嫌いなら、わざわざロングコートを着る必要はありません。
変化するのは流行だけではありません。私たち自身もまた、変化していきます。年を取ると、体型や肌や髪の質感が変わりますから、フィットする色や素材、シルエットも以前とは違ってきます。それは当然のことです。