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命がけの出産、風呂場で産んだ女子高生…ドラマ『透明なゆりかご』は妊婦たちのエピソードが刺さる

 ドラマの定番とも言える医療ドラマ。これまでにもたくさんの作品がつくられてきましたが、現在放送中のドラマでぜひオススメしたいのが、清原果耶主演『透明なゆりかご』(NHK総合、金曜夜10時~)です。

「透明なゆりかご」NHK公式サイトより

「透明なゆりかご」NHK公式サイトより https://www.nhk.or.jp/drama10/yurikago/

 主人公は高校の準看護学科に通う青田アオイ(清原果耶)。彼女が看護助手のアルバイトとして訪れた産婦人科での実務と、院長の由衣朋寛(瀬戸康史)、先輩看護師・望月紗也子(水川あさみ)、そして看護師長・榊実江(原田美枝子)らとの交流を通じて成長していく姿を描いていきます。


不倫で妊娠、赤ちゃんを捨てた高校生…


 若きヒロインが現実に直面し苦悩し逡巡する様子に加え、注目したいのが各話ごとに登場する妊婦たちです。

 これまで放送された3回分について、見た女性達からの感想とともに振り返ってみます。

 第1話(7月20日放送)では、未受診で不倫相手の子どもを妊娠し出産する妊婦・田中良子さん(安藤玉恵)が登場しました。初めは生まれてきた赤ちゃんに愛着が持てなかった彼女が次第に愛しさを感じるようになり、なんとか退院してハッピーエンドと思いきや、後日、主人公・アオイは彼女の赤ちゃんが授乳中に窒息死したことを知らされます。

 不倫という、ある意味で日常的な設定についての反響は多かったようです。

 この妊婦さんは、出産後に失踪し、後日、不倫相手らしき男性を連れて戻ってきて赤ちゃんの目の前で怒鳴り合いの喧嘩をします。その後ボソリと、赤ちゃんさえ産めば彼を自分のものにできるかもしれないと思った……という内容のことをつぶやくのですが、女性視聴者の中には「子供を人質にして、よその旦那を奪おうなんていう考えが恐ろしい」「長年の不倫は女性をここまで狂わせてしまうのだと想像してしまう」といった感想をもったようです。

 またエンディングの赤ちゃんの死は虐待なのか不慮の事故なのか分からないですが、これには「命を道具にした報いなのか? やり切れない回だった」というコメントが目立ちました。


 第2話(7月27日放送)では、糖尿病患者である菊田里佳子(平岩紙)が失明の危険をおしてまでも妊娠を継続し出産する決意を固める一方で、自宅の風呂場で出産し、紙袋に入れた赤ちゃんを病院の前に捨てた女子高校生(蒔田彩珠)の姿も描かれました。

 この高校生の望まない妊娠。主人公は、許せない…と彼女の家の前まで行きますが、結局、そのまま引き返します。本人にしか分からない事情と気持ちがあることに気づいたからでしょうか。

 主人公と同じように、この高校生を断罪できないと、見ているうちに気持ちが変わったという女性がいました。

「妊活中の私は、“なんて身勝手な女の子だ!”と腹を立てながらドラマを見た。でもよく考えると、仕事をしている大人で、子供ができてもできなくても生活に困りはしない立場の私には、将来に絶望した少女の何も理解できないのだろうと思う」

 たしかに産みたくても産めない人が沢山いる一方で、産みたくなくて産むことになってしまう人もいるのが現実です。


 第3話(8月3日放送)では、虫垂炎手術の全身麻酔で意識不明に陥り危篤状態になった夫に、おそらく聞こえていないだろうとわかっていながらも、生まれてきた赤ちゃんの泣き声を聞かせようとする女性を田畑智子が熱演しました。

 この3話のタイトルの「不機嫌な妊婦」がしめす通り、妊婦の安部さおりはいつも不機嫌で主人公の小さなミスにも激怒します。

 ですが、その不機嫌にはわけがあるのです。盲腸手術から、二度と目を覚まさなくなってしまった夫は「運の悪い合併症で、誰も悪くない」から、残された彼女はどこにも怒りをぶつけられずにいたのでした。これには「気の毒で仕方なかった」と感じた女性が多いよう。

「私の父も、簡単だと言われていた手術の合併症で亡くなった。私たちの場合は、家族の中で怒りをぶつけ合うしかなかった」
「怒りをぶつける敵がいるのは、消耗もするけど、楽でもあると感じた。あの女性はつらすぎるだろうと思う」

 どんなに小さな手術でも、命を落とす危険がある。そのことを、本人も家族も覚悟していないといけないということを痛感させられる回でもありました。


 そして8月10日放送の第4話では、アオイと親しくしていた妊婦・真知子(マイコ)をアクシデントが襲います。産後、出血がなかなか収まらず、意識も低下する彼女。必死の処置をする「由比産婦人科」のスタッフたちでしたが、院長の由衣は大学病院への搬送を決意。救急車で運ばれてゆく真知子を、アオイ(清原果耶)はなすすべもなく見送るのでしたが…。


 それぞれのエピソードの強さもさることながら、妊婦を演じる役者たちの演技力と相まって、毎回見る人の心を鋭く突き刺します。

“奇跡”の上に成り立つ“生命”を知らしめるドラマ


沖田×華「透明なゆりかご」講談社

沖田×華「透明なゆりかご」講談社

 このドラマの原作は2018年度の講談社漫画賞少女部門を受賞した沖田×華(おきた ばっか)さんの作品です。

 原作マンガはエッセイ風のタッチで、個々のエピソードについて淡々と綴られている印象ですが、ドラマではヒロインの心情をはじめ妊婦の抱える背景などが細かく描写され、文字通りにドラマチックな内容となっています。

 その結果、彼女たちの生き様が視聴後に余韻となって残り、生命の儚さや尊さについて考える時間が生まれているのです。

 漫画を原作としたドラマは現在では珍しくありませんが、スピード感や表現など、映像化することで原作の良さをスポイルしてしまうケースがたまに見受けられます。しかし、本作の場合は映像化が良い方向へ作用していると言えるでしょう。


 脚本は『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命』シーズン3や、現在公開中の劇場版『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命』などを手がけた安達奈緒子。次代を担う医療ドラマのエキスパートとしてだけでなく、女性の目線も盛り込まれた丁寧でリアルな脚本に仕上がっています。

 本作で取り上げられるエピソードの一つ一つを見ると壮絶に感じられますが、どれも生命(いのち)の現場では起こり得ること。まさに私たちの生命が“奇跡”の上に成り立っていることを、改めて知らしめてくれるドラマです。

<文/中村裕一>
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