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息子の長所を“障害”と言う病院。でも療育センターは違った<発達障害のリアル>

ぽんちゃんはおしゃべりができない Vol.7】  小学生5年生の娘と小学2年生の息子を持つシングルマザーの筆者が、発達障がいの息子・ぽんちゃんとのドタバタな日々を綴ります。 前回のあらすじ> 3歳児検診で、他の子たちが当たり前のようにできることを、ぽんちゃんはできない。保健士さんから「療育センター」に行くことを勧められるも、電話をかけたらまさかの半年待ちだった。

療育センターのママたちの表情が晴れやかだった

 長い長い半年という待ち時間をやり過ごし、ついに訪れた療育センターの面談。  息子を連れて、初めて門をくぐった療育センターは、大きな病院と雰囲気が変わらなかった。ただ、とてもアットホームで、一目で障害があるとわかるような車椅子の子から、ぽんちゃんのように元気に駆け回っている子までがたくさんいる。その子たちが流暢にしゃべっているのを見ると、「あの子は話せるんだ」と思ってしまったり……。
※写真はイメージです

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 本当に様々だが、不思議と、その保護者であるママたちの表情はとても晴れやかなのだ。きっと、ひとつ壁を越えているのだろう。もちろん、心のうちに抱えているものはわからない。でも、そこに暗い空気は流れていなかった。

息子の長所を“障害”と言う病院。療育センターは違った

 順番が来て呼ばれ、息子と一緒に診察室に入ると、小児科の先生と見てすぐにわかるような、キャラクターのボールペンをポケットにさした、優しそうな女性の先生が迎え入れてくれた。そこで、これまで病院で何度も何度も話してきたぽんちゃんの状態、近況を話すと、メモを走らせている。常に笑顔でうなずきながら聞いてくれる姿は、病院とは違う。  以前、大きな病院で先生に良かれと思い、「人見知りしないんです! 誰にでも懐くんですよ」と話したときに、「それは障害の一つです。判断ができていないんです」と言われ、ものすごく傷ついたことがあった。“障害”という言葉に慣れているママなんていない。なにより、ぽんちゃんはまだ病院で発達障害と正式に診断されているわけではなかった。  ぽんちゃんは“まだ”障害を持っているわけじゃない……。  そう信じたい気持ちが強かったからこそ、常にぽんちゃんの状態を笑顔で楽しそうに聞いてくれる先生はとてもありがたかった。きっと、これが相性というものなのだろう。  ちなみに、8歳になった今でも、この先生にお世話になっている。息子は、この先生に会うと、すごく嬉しそうに駆け寄り、先生の膝に乗ってパソコンで遊ぼうとする。 ぽんちゃんはおしゃべりができない Vol.7 数か月に一度会える、大好きなお姉さんとでも認識しているのだろう。先生もまた、ぽんちゃんと会うたびに、「大きくなったね」「〇〇ができるようになったね」「相変わらずかわいいねぇ」とメロメロである。ぽんちゃんの愛され力は無双だ。

療育は親も新たな道を迫られる

 話を戻そう。結果として、初めての面談の後、ぽんちゃんは、STと呼ばれる言語療法と、OTと呼ばれる作業療法を週に1度受けることとなった。保育園に通いながら、朝の1時間を費やすことになる。私がフリーランスの仕事だからこそできることだが、これを週1、平日にするとなると、親が普通の会社員なら難しい。療育のために、仕事をパートにするママも多いことだろう。療育をしたほうがいいという判断が下ったら、親も、新たな道を迫られる。これもまた、難しいところだ。  保育園にそのことを告げると、ぽんちゃんの発達遅延に気づいてくれた先生が、「やれることはなんだってやったほうがいいわよ!」と背中を押してくれた。そうだ、この子のために、なんだってやれることはやってあげたほうがいい。結果はやってみなくちゃわからない。その日から、毎週1度、多いときは2回、療育センターに行くことが決まった。 <文/吉田可奈 イラスト/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【登場人物の紹介】 登場人物の紹介息子・ぽんちゃん(8歳):天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず小学校では人気者 娘・みいちゃん(10歳):しっかり者でおませな小学5年生。イケメンの判断が非常に厳しい。 ママ:80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。著書に、女子SPA!での過去の連載をまとめた『シングルマザー、家を買う』がある。Twitter(@singlemother_ky) 【ワタナベチヒロ プロフィール】 漫画家、イラストレーター。お金にまつわる役立つ知識をオールマンガで1冊にまとめた著書『お金に泣かされないための100の法則』(ファイナンシャルプランナー山口京子先生が監修)が主婦と生活社より発売中。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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