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夏ドラマ名作ベスト3。山﨑賢人『グッド・ドクター』が医療現場の厳しさを描いて3位

 9月もいよいよ最終週。2018年7月クールのドラマがすべて最終回を迎えました。  そこで、今クールも僭越ながら、わたくしドラマウォッチャーの中村裕一が夏ドラマベスト3を選ばせていただきました。みなさんの評価はいかがでしょうか?

第3位 医療現場の厳しい現実が浮き彫りに『グッド・ドクター』

『グッド・ドクター』

『グッド・ドクター』フジテレビ公式サイトより https://www.fujitv.co.jp/gooddoctor/

 まず第3位は『グッド・ドクター』(フジテレビ系)。’13年に制作された韓国ドラマのリメイクである本作。主人公は自閉症スペクトラム障害でサヴァン症候群を持つ小児外科医・新堂湊(山崎賢人)です。  ドラマはコミュニケーション能力に偏(かたよ)りのある彼の言葉や行動がもとで起こる出来事とともに、医療の厳しい現実がさまざまな角度から描かれていきます。時として相手への配慮に欠けるように見える湊の言動は周囲に波紋を呼びますが、それが逆に写し鏡となり、今の医療現場が抱える問題点や課題、隠された人間心理が浮き彫りにされていきます。
 最終回、川で溺れたことで脳死判定を下された女の子の担当となった湊が意識のない彼女のために誕生日会を開き、娘の臓器提供を求められ苦悩していた両親はその事をきっかけに提供を決断。  そして今度は、“自分が助かるには提供してくれる誰かが亡くなることが必要”と、臓器を受け取ることに不安や罪悪感を感じている長期入院の少女・伊代(松風理咲)に湊が、 「その子は、一人では生きることができませんでした。(中略)でも伊代ちゃんの中で、新しい命として生き続けることができます。伊代ちゃんと一緒に、大人になることができます」  と優しく語りかけるエピソードには、子を持つ親として簡単に答えがだせないくらい考えさせられました。  医療現場に限らず、キレイごとだけではなかなか片づけられないのが世の中です。基本的には穏やかに波風立たぬよう気を使いながら誰もが過ごしていることでしょう。そんななか、建前や社交辞令を飛び越えてまっすぐに放たれる湊の言葉にハッとさせられた人も多かったのではないでしょうか。  この物語をファンタジーと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、フィクションだからこそ表現できる、伝えられるメッセージもあると思います。人が人を思いやる余裕があまりないと感じられる今こそ、人々がこうあってほしい、こういう社会になってほしいという願いが込められたように感じたドラマでした。

第2位 海外ドラマのような質感と読後感『dele(ディーリー)』

「dele」

「dele」テレビ朝日公式サイトよりhttp://dele.life/

 第2位は『dele(ディーリー)』(テレビ朝日系)。人が死んだ後に残される「デジタル遺品」を管理・消去する仕事を請け負っている坂上圭司(山田孝之)と真柴祐太郎(菅田将暉)の活躍を描いたドラマです。  主要キャラを必要最低限にとどめ、安易に人物の心情を表現したり状況を説明したりするようなBGM・劇伴音楽を極力排するなど、まるで海外ドラマのような空気感が漂(ただよ)う、硬質で志の高いドラマづくりがうかがえる作品でした。
 エピソードはどれも粒ぞろいでしたが、第6話は自殺した女子高生が残したデータをめぐってストーリーが展開し、実際に起きた事件ともオーバーラップする見ごたえのある回でした。ネットによる遠隔操作で彼女を死に追いやった男に対する圭司の「一生見張り続けてやる」という怒りのセリフが印象的であるとともに、すべてを「暴く」ことが正しいことなのか、という大きな命題も見ている私たちに残しました。
 そして最終回では祐太郎の過去が詳細に明かされ、ある依頼人の残したデータが彼らの存続を脅かす事態にまで発展。圭司と祐太郎はそれぞれのやり方でこの危機をどうにか乗り越えますが、このまま解消してしまうかと思われた2人のコンビが復活するエンディングで終わりました。テレビドラマですが、まるで小説のような清々しい“読後感”がそこにはありました。
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