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『黄昏流星群』に見る専業主婦の苦悩。「私には何もない」と自信を失い…

亀山早苗の不倫時評――ドラマ『黄昏流星群』の巻 vol.5>  不倫の恋に悩む男女を描いたドラマ『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』(フジテレビ系、木曜夜10時~)。5話を終えて、人間関係が渾沌(こんとん)としてきた。主人公の完治(佐々木蔵之介)、真璃子(中山美穂)夫婦とその娘・美咲(石川恋)の家族3人とも、それぞれパートナー以外に好きな人がいるという壮観さである。  ただ、この中で娘の婚約者(藤井流星)に心を寄せる真璃子の立場が複雑だ。職場を追われて出向となった完治、結婚と恋愛は別だと割り切る美咲には、それぞれ強さと意志を感じる。自分で自分の人生を歩いている強さがある。しかし、真璃子にはそれがない。なぜだろう。専業主婦だからなのだろうか。  真璃子は専業主婦である自分をどう思っているのだろうか。その発言には自信のなさがうかがえる。 「私には何もない」とか「子どもだけをよりどころにしてきてしまった」とか。確かに子どもが成人すれば、親の出る幕は少なくなる。そのとき仕事があれば、あるいは充実した趣味をもっていれば寂しさが消えるわけでもないだろう。  経済効果を生まない専業主婦という立場は、それほど卑屈にならなければいけないのだろうか。だからこそ、「誰も代わりになれないことをしてきたじゃないですか」と娘の婚約者に言われたとき、美咲は涙をこぼすのだろう。「誰もそんなことを言ってくれなかったわ」と。そして自分に優しくしてくれた娘の婚約者に心を奪われていく。

働きたいのに、働けない。専業主婦の苦悩

 主婦たちの多くが働く今、専業主婦たちは妙な憂鬱を抱えている。 「男女平等で育ってきて、大学を出て就職もした。もちろん子どもができても仕事は続けるつもりだったんです。だけど夫が予期しなかった転勤で、他の土地へ行かざるを得なくなった。単身赴任も考えましたが、生まれたばかりの子が病気がちだったし、私も夫も近くに頼れる実家がない。そうなるとふたりで力を合わせて子どもを育てていくのが先だということになって」  マナさん(38歳)は悔しそうにそう話す。再度転勤になって関東に戻ってきたのは1年前。当時、病気がちだった上の子は元気に7歳になり、下の子も3歳になった。
子ども

写真はイメージです(以下同じ)

保育園が見つからなくて、すぐに仕事を始めることもできず、今は専業主婦です。『専業主婦なんて優雅でいいわね』と友だちに言われるけど、何年も自分のものなんて買ってないし、生活は苦しいし。節約のために安い食材を買いにいってせっせと料理して。子どもはかわいいけど、日々、生産性のない生活。誰も褒めてくれない、評価もしてくれない。子どもたちが大きくなったら、私は何を生きがいにしたらいいのか、と今から不安です」  子どものため、家族のためにやっていると頭では思っても、自分の食い扶持(ぶち)さえ稼げない状況が情けなくなることもあるという。 「学生時代から会社員だったころは、男性に奢(おご)ってもらうのがイヤでデートしても割り勘だった。男に借りを作りたくないといつも思ってた。若さゆえの頑なさもあったけど、今だってやはり本当は夫と対等な立場でいたい。だけど、『食べさせてもらっている』という思いが抜けないんです。どうしても立場が弱い。夫がそういうことを言うわけではないけど、自分ががんじがらめになっているような気がしますね」 専業主婦の苦悩 今の期間は、夫は山へ芝刈りに、私は家でお洗濯、役割分担をしているだけだと割り切れればいいのだが、まじめな女性ほど、『食べさせてもらっている自分』を意識して萎縮(いしゅく)しがちだ。 「1日でも早く仕事をしたい。そう言うと、働く母親に育てられた夫は、『せめて子どもが小学校高学年になるまでは家にいてやってほしい』と言うんです。私は専業主婦の母親から、父への愚痴などを聞かされて過ごしてきたので、母親も働けばいいのにと思ってた。いざ私が仕事をするとなったら、意見の違う夫との不毛な闘いも始まるんだろうなと思います。  ただ、最初はパートでいいから仕事をしたい。やはり仕事をしない自分が不安でたまらないから」  自分の意志で専業主婦を選択したのなら、もう少し満足度は上がるのかもしれない。だが、マナさんのように家族の状況でやむを得ず専業主婦となってしまった女性も少なくはないだろう。焦る気持ちはわかるが、状況はいつか必ず変わる。
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仕事以外の楽しみを見つけた女性も
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