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居場所がない夫は浮気する?会社でも無視され…『黄昏流星群』のヒサンな主人公

亀山早苗の不倫時評――ドラマ『黄昏流星群』の巻 vol.3>  人生の折り返し地点で悩みを抱えた、男女の恋愛を描いたドラマ『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』(フジテレビ系、木曜夜10時~)。

それぞれの「プライド」という名の見栄の張り合い

 黄昏流星群3回目、エリート銀行員だった完治(佐々木蔵之介)は出向となったことを言えないまま、新しい職場に日々、出勤している。誰も仕事の概要を説明してもくれず、一緒にランチもとってくれず……。食堂で働く栞(黒木瞳)だけが彼の心を支えている。  そんなある日、妻の真璃子(中山美穂)は夫が携帯を忘れていったことに気づき、銀行へと向かう。そして完治に想いを寄せる元秘書の女性から、夫が出向となったことを知らされるのだ。  その晩の夫婦と娘3人家族のやりとりが、観ていて非常に不快ながらも「あるある」と頷かざるを得なかった。まずは真璃子が帰宅した夫に口火を切る。 「秘書が何とも言えない表情で自分を見た。優越感? 自分のほうがご主人のことをずっと知っていますと言いたげな。どうしてあんな顔で見られないといけないの?」 「秘書とは何でもないとあなたは言うけど、出向したこともひとりでスイスへ行ったことも黙っていた。そういう人の言うことを信じられると思う?」 私はずっと我慢してきた。仕事で約束をすっぽかされることも育児に協力的でなかったことも。あなたは仕事が好きなんだから、仕事に命を懸けているんだからって」 「私があなたの奥さんでいる意味って、なんなのかな」  なかなか強烈な言葉ばかり。だが、これはすべて「妻のプライド」である。とはいえ、妻として長年我慢してきたのだろうということはよくわかる。 「私を大事に思ってないんでしょ」 「私を見て、私を頼って」  そんなせっぱつまった心が言葉となって迸(ほとばし)る。元秘書との浮気疑惑もあり、彼女は必死だ。  それに対して、夫は素直に謝っている。「オレ自身もどうしたらいいかわからなかった。気持ちの整理をしてから伝えようと思っていた」  彼はそう白状する。だが、一度は彼は伝えようとしていたのだ。それを拒絶したのは妻である。そのときも元秘書との浮気を疑って、夫の言葉に耳を貸さなかったのだ。だが、「言おうとしたけど聞いてくれなかったじゃないか」と、夫は言わない。過去を持ち出すのは得策ではないと思ったからか、あるいは今後の伏線なのか。  出向という屈辱を、男は受け止めきれずにいる。それを妻はわかってくれない。出向先で、日々、銀行支店長だったプライドをずたずたにされていることも妻には言えない。言えばよけいにみじめになるからだ。
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世間体にとらわれる親。そのとき子供は……
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