早くなくなんないかな、戸籍制度/内田春菊
私達が結婚・離婚や出産をした時に、関わらざるを得ないのが戸籍というシステム。
現住所を示す住民票とは別に、戸籍謄本には、どこで生まれ、誰の子どもであるか、誰と結婚し、いつ亡くなったのかなどが書かれていますよね。
海外では元々ない、もしくは廃止され、現在は日本・中国・台湾だけに残る戸籍制度を、マンガ家・小説家の内田春菊さんはどのように考えているのでしょうか?(下記、内田春菊さんの寄稿です)
常日頃から戸籍制度が嫌いと言い続けている私はついに、これに集中して書く有り難い場をいただきました。
が、担当さんとお話している間に、これもまた人それぞれなのだなということがわかってきた。よくよく考えたら(考えなくても)籍に入ると書いて入籍。婚姻届けを出すことはほぼ戸籍の手続きなのだった。
入籍しました、と言われると、やはりお祝いしたくなる。結婚にはいいこともいっぱいあるし、バツ3の私が性懲りもなく普通に(相手を養子にせずという意味)入籍し続けてしまったのも、虐待されていた実家の名字を捨てて、新しい家族を作るという前向きなイメージがあったから。違う名字で呼ばれると、別人格になれたようで嬉しかったのです。
が、夫婦別姓を希望される人たちの気持ちもわかる。名字が変わると、それでも同一人物であることを、(ほぼ女だけが)あちこちで証明しなければなりません。入籍の知らせならまだいいが、離婚後は、手続き関係でそれを証明しようとすると、される側の態度が「え?」みたいな感じで、どうもよろしくない(特に銀行)。
それを知ってか知らずか離婚届提出三回目には区役所の人から、
「離婚してもそのままその姓をお使いになることが出来ますよ?」
と言われた。が、すでにそんなものはお使いになりたくない気分だったのでお断り申し上げるしかなかった。
名字が違うとお客様に対して「え?」とかいう態度を取る側が一番いけないとは思うが、こちらが仕事で会う人には説明しないとならない。私はペンネームあるからいいけど、結構不便なことでしょう。結婚しても名字を変えないで仕事してる人もよくいますよね。
そこはまあ、大きな銀行の年かさの男の行員の態度ほど悪い、くらいな話なのだが、「家」制度と戸籍制度が密着していることを昔の私はよくわかっていなかった。最初に産んだ子が私生児(正しくは非嫡出子、結婚と関係なく生まれた子のこと)だったことも全然気にしてなかったし、私生児母仲間が、
「私生児って長男とか長女とか書いてもらえないんだよ!何人産んでも全部『子』になってんの」
と怒っているのを聞いた時も(これはその後、長男長女などの記述に変わったのですが)何を怒ってるのかよくわからなかった。
私自身は長女だけど、それが嬉しかったことなんて一度もない。母が内田家をどうにかするために2度目の夫を養子にしろと言い出したことがあったが(自分は何十年も妾やってたくせに)、あれって私が長女だったからなのか?わからん。「長」のメリット、男にはあるのか?
「長男の結婚祝いだけ30万」という人と結婚したことあるけど、家業継がなかったことでいつまでも喧嘩してたような感じだったのに。お返しはその人の両親がしたらしい。全くもってムダだ。
そして、名字だけでなく、離婚してそのままにしておくと、子どもが夫の籍に残ってしまうんです。親権も子の籍も夫のとこという場合はもちろん要りませんが、私の夫は暴力夫やヒモばかりだったので子どもの籍も一緒に抜く手続きをした。この辺から戸籍制度の上では「子は家のもの」みたいな雰囲気が伝わってくるでしょう。去る妻は子を置いていくのがデフォルトなのであります。
(詳しくは漫画『あなたも奔放な女と呼ばれよう』《講談社文庫》参照。)
さてそれだけならばまだいいが、3度目の入籍の時私には2人子がいて、3人目が生まれたところだった。3人目は3回目の夫の子だから私は「実母」でいいのだが、先の2人にとっては、私は「実母であり養母」という記述になっていた。
はて、どういうこと?
産んだからそりゃ実母だ。養母でもあるって何?
これがあなた、「○○(3度目の夫の名字)家」に入籍した途端、2人は○○家の養子になるので、私も養母にも、なるんですってさ(夫がヒモでも)。
ムズムズした私は弁護士に相談。すると、相続などのことは何も変わらないので大丈夫だという。
そうなんだ、じゃあもう気にしないようにするしかないね、と気にしないことにした。区役所行くたんびに前の住所の役所に連絡取って調べるみたいで、あちらでひそひそ打ち合わせされて何時間も待たされ、そのうちガラガラとシャッターが閉まってしまったり、そういう事も一度ではなかったが、一応決められた手続きはしとかないとまたいつか今より面倒な事になるかもしれない。
「区役所や家庭裁判所に行くのを億劫(おっくう)がってたら幸せにはなれない」という持論はその頃出来たものです。
戸籍制度が嫌い

「家」制度と戸籍制度が密着していることを昔の私はよくわかっていなかった
戸籍制度の上では「子は家のもの」みたいな雰囲気
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