――そして謎がもうひとつ。“同志”である西村京太郎と山村美紗の関係です。山村美紗が無名時代にファンレターを送り、それをきっかけに才能と美貌に惚れ込んだ西村京太郎が京都に移り住み、やがて山村の隣の家に住むようになった。ふたりの家は地下でつながっていたとも書かれています。一方、夫はその向かいのマンションに住んでいる。
この三角関係は、端から見ているとなかなか理解できるものではありません。ただ、「京都に女王と呼ばれた作家がいた~山村美紗とふたりの男」を読んで腑に落ちた気持ちになりました。花房さんは、ここを書きたかったのでしょうか。

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花房: この本を出したいと出版社の人たちに話したときに、皆「美紗さんのことを書くとなると、京太郎さんにふれないわけにはいかないでしょ。だからダメです」と言われました。確かにそうなんです。「作家・山村美紗」の人生において、西村京太郎さんの存在は無くてはならないものです。けれど、夫の巍さんも、「作家・山村美紗」が生きるために、欠かせない存在です。
ふたりの男たちとの奇妙な関係は、山村美紗の評伝を描く上で、最重要事項でした。
読者がどう捉えるのかは、わかりませんけれど、避けては通れませんでしたね。
――本作を書くにあたって、「ミステリーの女王」を取材されたと思います。膨大な時間、向き合ったと思いますが、花房さんは、山村美紗のどんなところに惹かれたのでしょうか。
花房: 美紗さんの人生を追って、とにかくひたむきに生きてこられたのだというのに、惹かれました。そして欲望に正直ですよね。長者番付一位になりたい、男の人から可愛いと思われたい、他の作家が人気が出たら嫉妬するって。
これは版元の西日本出版社の社長も言っていたのですが、可愛い人だったんだろうな、だから男性たちも彼女に惚れたのだと思いました。
そして作家として、「京都」というジャンルを作り、ひたすら書き続けてこられました。世の中「作家」は、たくさんいますけれど、「作家」という肩書で生きているのではなく、作品をたくさん世に出し、読まれている。そういう本物の「作家」である美紗さんは、同じく出版の世界にいる者として、尊敬します。
本が売れまくって、モテまくるなんて、最高の人生です。
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作家生活を通して京都を描き続きた山村美紗の人生は、実に華やかなものであったが、そこに2人の男が大きく寄与していたことはあまり知られていない。付記するならば、山村美紗の人生には松本清張という大物作家の影響も色濃く作用している。
『
京都に女王と呼ばれた作家がいた~山村美紗とふたりの男』はそんな彼女の半生を鮮やかに活写している。山村作品を知る人はもちろん、そうでない人でも惹き込まれることだろう。
<取材・文/女子SPA!編集部>