続いて訪れたのは蒲田羽根付き餃子の老舗「金春新館」。こちらはべンヴェヌートとは異なり、中華の“王道”な雰囲気が漂う。

【金春新館の焼き餃子】手作りの皮を使用し、熱々に焼き上げた人気の焼き餃子は女性からも人気。ほかにも水餃子、海老入り、ナマコ入りなどの餃子もあり、いずれも人気。地元の人から愛される老舗だ。320円
「何か特別な味つけはあるの?って聞かれるけど、ウチは至ってシンプル。豚肉にキャベツと白菜、そして豚骨ベースのスープを入れて餡を作っているの。こだわりというわけじゃないけど、季節によって白菜とキャベツの割合を変えるくらいかな」
店主の八木誠さんが餃子とビールをテーブルに置きながら、笑顔で話をしてくれた。
「でもね、皮は大事。機械で作ってみたこともあるんだけど、“ウチの餃子”じゃなかった。たぶん、普通の人が食べてもそんなに感じないかもしれないけど、味も歯応えも違うんだ。一口食べただけでダメって思った。だから自分でやんなきゃって」
香ばしく色づいた羽根がなんとも食欲をそそる。たまらずに頬張る。ジュワリッ! 熱々の肉汁がほとばしり、口を焼く。たまらん! ジョッキを摑むと無我夢中でビールを流し込んだ。
フーッ。半分以上あいたジョッキを見つめながら、余韻に浸ってしまった。そしてまた、もう一つ、また一口と餃子とビールが進む。餡自体も旨いのだが、ニンニクの入った特性のタレが後を引く。
「餃子にはニンニクは入れてないの。ショウガをちょっと入れるくらい。ニンニクはタレだね。醤油に刻んだニンニクを2日ほど漬けて、発酵する手前で出すんだ」

ニンニクを使わずにショウガを少し入れる餡は、シンプルで奥深い味が特徴
店を出ると熱風が吹き抜けた。餃子でスタミナがついたのか、熱風すらも心地よかった。

蒲田には蒲田駅を中心に20軒以上の餃子の店がひしめいており、宇都宮や浜松にも引けを取らない”餃子の街”なのである。
蒲田の餃子の特徴は、今回紹介した羽根。その元祖と言われる店は「您好(ニーハオ)」。店主の八木功さんが友人たちをもてなすために作った餃子が評判となり、その後研究を重ねて羽根付き餃子が生まれたと言われている。
そして、この八木さんの親族が「歓迎(ホアンヨン)」や「金春(コンパル)」を出店。蒲田羽根付き餃子の礎を築いたとされているのだ。
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S級グルメ―

<取材・文/野中ツトム、武馬怜子(清談社) 撮影/渡辺秀之>
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●ベンヴェヌート
東京都大田区蒲田5-45-1 YMビル1F
営業時間:ランチ平日11時半~14時半、土日祝日12~15時、ディナー月火18~23時、水木18~24時、金土祝前18時~翌2時、日祝17~23時
●金春新館
東京都大田区西蒲田7-63-2
営業時間:11~14時、17~23時 休:不定
餃子以外にも豊富なメニューがある。3500円で食べ放題・飲み放題のコースも人気