もどかしい気持ちにさせる罪な彼ですが、もうひとつの見所は、“子犬の中の人”の部分。玉森さんは、巧みにそれを演じています。ポイントは、彼の美しい“手”。
第3話のラストシーン。潤之介の個展会場をあとにした奈未。舞い散る雪のなか、ありのままの気持ちを伝える彼女に感応し、「どうしよう……」と微笑んで潤之介が伸ばす手。「目は口ほどに物を言う」と言いますが、玉森さんの場合は、手もことさらに雄弁なのだと思います。
嬉しい気持ち、切ない気持ち、いとしい気持ちをのせて、白くスマートな指がシャッターを切ったり、奈未を守ったり、彼女の手を包み込んだりします。それは決してひよわでなく、時に可愛い“わんこの手”に化けても、青年らしい硬質さと凜々しさをしっかりと宿した、夢を拓いて掴むための掌(たなごころ)。
奈未の手を握ったとき、潤之介の手は殻を破る強さを得たように思えました。その動きが、佇まいが、あまりに情緒的でため息が出ました。
『グランメゾン東京』(TBSテレビ系)で見せたそれも秀逸でしたが、玉森さんはおだやかな笑顔の下で照り曇る心の機微を表すのがとても上手い。繊細な気持ちの色合いを、その手の表情でなまめかしく見せてくれるのです。
玉森さんが纏うのは、きわめてパウダリーなまばゆさ。粉雪のようにあえかで、しゅわりとはかなそうなのに、やさしくて強い。彼の手は、その本質を端的に表すパーツです。ほんとにもう、なんてずるいきれいな手!
“わんこ”なだけでも反則なのに、素敵な手も拝めるなんて「このやろうありがとうございます!」としか言えない、よきドラマだと思います。
<文/みきーる イラスト/二平瑞樹>
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