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路上で騒ぐ子供と親「道路族」をさらすマップに賛否。いつから子供に厳しい世の中に

現代社会は子どもに注意しづらくなっている?

「“遊んで騒ぐこと”に関しては、まず前提として我が子と近所の子どもたちが一緒になって遊ぶのが普通でした。そして、農村部では家と家の行き来がさかんでしたが、大人たちは日中畑や田んぼで仕事をしていたので、子供の騒ぎ声はそこまで気にならなかったのでしょう」  田舎だと今でもおおらかそうですよね。都会だとどうでしたか? 「都市の庶民は長屋という狭い集合住宅で暮らしていましたが、ご近所さんと密接な繋がりがあったので、子どもの身元もわかっていました。知っている家の子どもだから、騒いでもある程度我慢できたろうし、あまりにうるさい場合は直接注意していました」  大人も子どももお互いが知り合いだからこそ、気を遣いあいながら過ごしていたんですね。今はお隣さんと話したことのない家庭も多いし、お互いに干渉するのを怖がっているような気がします。今のように子供に注意しづらくなったのは、いつ頃からなのでしょう? 「それは1960年代頃からの高度経済成長期以降、現在のような都市型社会になってからでしょう。会社勤めが増えたことで家と働く場所が切り離され、子どもは保育園・幼稚園に預けられるようになりました」  地域や近所付き合いといったものから離れた暮らしになったわけですね。 「はい。しかも、自動車の普及によって道路で遊べなくなったのです。そして、遊ぶための場所、つまり公園もできました。その結果として、自分と無関係な子どもが騒いでいると感じるようになったわけです。都市部では家が密集しているので、特にうるさく感じるのでしょう」

「まっとうな理由であれば、ありがたい」の声も

子供 遊ぶ

画像はイメージです

 なるほど。今は公園で遊ぶことが前提になっているから、子どもが道路で遊んでいると、なおさら気になってしまうんですね。しかも、近所付き合いがなくて素性のわからない子どもだから注意しにくくなっている、と。 「昔の大人は我が子だけでなく、近所の子どものしつけもしていました。素行の悪さが目に余る子は叱ったり、親の帰宅の遅い子は家でご飯を食べさせてあげたりと。近所の子どもは他人の子どもではなく、みんなの子どもだったのです」  子どもは成長過程だから、してはいけないことの区別がまだつかないもの、いやむしろ、「してはいけない」と言われることをしてみたいものです。言われなかったらわからないこともたくさんあるし、親の目が届かないこともあります。ほんとうに危険なことや迷惑なことをする子どもがいたら、やさしく声をかけてあげるのが大人のとるべき振る舞いなのかもしれませんね。  子どもをめぐってご近所トラブルに発展しそうな場合は#9110(警察相談専用電話)で警察に相談してみる手もありますが、子育てママ世代からは「自分の子供が近所の人に叱られても、まっとうな理由ならそれもありがたい」といった声もあるようです。  話してみたら近所の輪が広がるかもしれません。まずは地域の大人がともに子どもを見守る意識を持つことで、より安心な暮らしにつながるのではないでしょうか。 【新谷尚紀(しんたに・たかのり)】 1948年広島県生。社会学博士(慶應義塾大学)。現在は、国立歴史民俗博物館名誉教授・国立総合研究大学院大学名誉教授。國學院大學大学院客員教授。著書は『柳田民俗学の継承と発展』(吉川弘文館)など多数
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