――料理を楽しめなかったのですね。
大久保「昆布やかつおぶしでダシを取ったってなんの味もしなくないですか? みんなはしてるのかな、私は全然。ダシを取ってる矢先から、カレーくらいいい匂いがしてきて、すごく美味しいものができるとかだったらやりがいがあるけど、そうでもない。
下ごしらえしても成果が見えないから、喜びが湧かない。ただただ日々お腹を満たすためだけに稼働してました。それよりも、どう考えても誰かが作って私の目の前においてくれて、『召し上がれ』って言ってくれるほうがドーパミンがバーッと出るんですよ(笑)」
――1巻ですみれ先生もダシを取るのに苦戦していました。その結果、「愛と平和のインスタントみそ汁協奏曲」が生まれたわけですけど、確かに、インスタントだっていいし、無理に料理しなくていいんですよね。
大久保「自分が『料理ができない』ってことをもっと早く認められていたら、夫にお願いして楽になれたんだろうなと思うんです。
仕事が忙しくなってストレスが限界まで達して、『
全部放棄する!』って言ってもう3〜4年経ちます。ずっと『料理なんてできない人はしなくていい』と思っていいのか葛藤していましたが、もう壁を乗り越えました。でもきっとまだ超えられない人がいるだろうというのは感じていますね。私が何年ももがいていた時間を、みんなはしなくていいんじゃないかっていう気持ちで描いています。自分を認めましょうってことです。でも、放棄してもやってくれる人がいないとか、様々な問題があるのもわかるので、そこはいろんな話し合いや手段が必要だとは思うんですが……」