当時は彼女も「結婚したい」思いが強かった。彼が短気だと薄々わかってはいたが、爆発したところまでは見たことがなかったので、人間、みんな短所はあると思って結婚へと踏み切ったのだ。
ところが結婚して半年後、彼女の妊娠がわかったころから彼は自分を抑制しなくなった。妊婦となった彼女が「弱い立場」になったから、本来のわがままを発揮するようになったのかもしれない。
「つわりで苦しむ私に、妊娠は病気じゃないっておふくろが言ってただの、甘えてるだの、今思い出してもはらわたが煮えくり返るような言葉を浴びせてきました。どんなにつらくても私、仕事は続けていたし、夕食も自分が食べられなくても夫の分は作っていたんですよ」

我慢していれば平和な家庭生活が待っているかもしれないと一時期は思った。ところがある日、気分が悪かったため、夕飯に買ってきたサラダなどの惣菜と冷凍食品の餃子を焼いたところ、夫が手をつけなかったことがあった。
「私は食べ物の匂いで気持ち悪くなりながらも、ここまでやったの、どうして食べてくれないのと言ったら、『オレは手作りのおかずしか食べない。そういう家で育った』と言い放ったんですよ。
実はうちは商売をしていて、両親が忙しかったので、近所の惣菜屋で買うおかずがいつもメインだった。夫はそれを知っていて、そういう言い方をしたんです。親までバカにされたと思いました」
彼女はテーブルの上にあった料理を皿ごと夫に投げつけ、そのまま身の回りのものを持って実家に戻った。
「結婚前に黄色信号がついている彼への疑問点は、結婚後に絶対、赤信号に変わります。特にモラハラは気をつけたほうがいい。当時の自分にも言ってやりたいくらい(笑)」
現在、ユキさんは実家で、両親と12歳になるひとり娘との4人で楽しく暮らしていると笑顔を見せた。
<文/亀山早苗>
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