彼女の言い分を聞いていると、どうしてそんな男性と結婚して3人も子どもを産んだのかと思う向きもあるだろう。誕生日の花束にしても、夫が花束を抱えて帰ってきたわけではない。配送されてきたものだ。夫が自ら発注したのか、秘書や部下に頼んだのかわからない。
妻を泣かせた「知り合った当初に言われたうれしい言葉が書いてあった」メッセージについては、夫の誠意が見られるが、はたして真意はどこにあるのか。「離婚したくない」ということなのか、「今も愛している」と伝えたかったのか、あるいは単純に誕生日だから喜ばせようとしただけなのか。
夫婦のことは夫婦にしかわからないから何も断定できないが、夫も姑も彼女がグラビアの仕事を続けていることには反対だったらしい。ただ、彼女はグラビアが大好きだったし、誇りをもって仕事を続けてきた。出産後もあれだけの体型を維持してきたのがその証拠だろう。家事や育児にも手抜かりなく、凝った弁当を作ったりもしていたようだ。
生き馬の目を抜くような芸能界で活躍しつづけるには、相当の努力と気の強さが必要なはず。お気楽な仕事ではないのだ。それだけに孤独感もあっただろう。夫はそれをまったく理解してくれないどころか、彼女を妻として認めてくれさえしなかったと彼女が思っても不思議はない。
「妻はこうあるべき」と押しつける夫と姑。子育てや家事を完璧にやっているのだから好きな仕事を続ける、と努力し続ける妻。実はいずれも「従来の夫婦像」から抜け出してはいないのだが、それでも「がんばりすぎる完璧な妻」が、夫にとってはうっとうしかったのかもしれない。
夫がもっと家事育児に関わっていれば、妻の気持ちに寄り添えたのだろうけれど、家庭には不向きな男性だったのだろうか。
熊田さんは、警察に出した被害届を現在までに取り下げていない。
1年つきあって妊娠を機に結婚した熊田さんだが、結婚前に「この人、いい夫になれないのではないか」という危惧はなかったのだろうか。
似たような経験をしたユキさん(42歳=仮名)は、「結婚したあとで、やっぱりと絶望感を覚えました」と言う。
彼女が結婚したのは29歳のとき。ふたりとも自宅住まいだったので、外でデートしてときどきホテルに行くようなつきあいだった。彼を長い時間、ゆっくり観察する機会はあまり多くなかった。
「それでも結婚前に沖縄に3日間、旅したことがあったんです。どこを観光するかで意見が割れて、『じゃあ、お互いに行きたいところにいってあとで報告会をしようよ』と私が言ったら、彼が朝食をとっていたテーブルをバンッと叩いて去ってしまった。
どうしてそれほど怒るのか私にはわかりませんでした。せっかく来たのだから、それぞれが興味のあるところへ行けばいい。その日はメッセージを送ってもまったく返ってこない。私は自分の行きたいところへ行って、夕飯もひとりで居酒屋へ。そこで知り合った人たちと盛り上がったので、彼も呼ぼうと電話したのですが、やはり出ない。結局、深夜までひとりで楽しんじゃいました」
ホテルの部屋に戻ると、彼はすでに寝ていた。翌朝、前日の話をすると、彼は一応、相づちを打ちながら聞いてはくれたが、ずっと苦い顔をしていたことを、ユキさんは結婚してから思い出したそうだ。
「自分の意見に従わず、ましてひとりで勝手に楽しんでいたことが、彼には本当に腹立たしかったんだと思います。結婚前はなんとかそこで怒りを爆発させずに自制したんでしょうね。あのとき、もっと彼の心の奥まで入り込んでいれば、この人と結婚したら危険だと思えたかもしれないけど」

写真はイメージです(以下同じ)