そこに至るまでの、深澤先生の心境の変化が見てとれるセリフを挙げてみます。 「(医師として)成長したその先に何があるんですかね？」 　……今以上の出世欲や野心がなさそう。お給料もそこそこでいいと思っている模様。 「僕はもっとおだやかに生きたいんです。平和に生きたいんです」 　……殺伐とした環境はホント無理……という本音がむき出しです。わかりみが深い。 「もう少しだけここで働かせてください。お願いします。このまま逃げたくないんです。よくわかんないけど。そう思ったんです」 　……この言葉には、不器用でも自分の気持ちに正直な彼の性格がよく現れています。 “平穏”は決して当たり前でなく、誰かのおかげで叶っているものであること。それを知った以上、目をつぶったままではいられなくなった深澤先生。 　生身の青年らしい弱さと温かさをもった彼は、これからどう成長していくのでしょうか。ヒロインの“美月”の名が夜を見守る月の象徴だとすれば、深澤“新”の名には、新しい朝を導く希望が込められているように思えます。深澤先生がどんな未来を拓いていくのか、とても楽しみです。 ＜文／みきーる　イラスト／二平瑞樹＞