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V系バンド好きの私が「ルッキズム問題」にモヤモヤしてしまう理由

社会に出て気づいた“美的感覚のズレ”

鏡 社会人になってバンギャル界隈以外の人と接するようになった途端、「エッジのきいた髪型してるね」とか「面白い服着てるね」と言われるようになった。このことを同じくバンギャルの友達に話すと「それ、バカにされてるんだよ!」と言われ、ここでようやく世間との美的感覚のズレに気づいた。  自分で満足いかないのなら、可愛くなるため、美しくなるための努力は必要だ。他人は人の容姿をそこまで気にしていないのでこれは自己満だが、自己満でいいのだ。  私はむくみやすい体質なので、寝過ぎたりお酒を飲み過ぎた翌朝などは、まぶたが腫れて奥二重になる。そんなときはやむを得ずアイテープで二重にするが、他人からしたら二重だろうが奥二重だろうが知ったこっちゃない。それでも自分だけは気になるので応急処置をする。  こんな風に美意識をこじらせているせいか、昨今のルッキズム問題に対して「ブスはブスだし、それを認めてメイクやファッションの研究やダイエットをしたり整形手術をすればいいのに」と正直今までは感じてしまっていた。  ところが最近、YouTubeで芸人のバービーさんの動画を見たことで、この考えが一変した。彼女は率直に言って美人の部類に入らない顔だが、コンプレックスだったニキビ跡の治療のレポートや、テーマを決めてのメイク動画などを発信している。その様子が心から美容を楽しんでいるようで、見ていて気持ちが良いのだ。バービーさんは自分の容姿を受け入れつつも、美と友達になっている。

雑誌に載せられる程度の顔面レベル

 数年前、とある女性ファッション誌の編集者と仕事をするかどうか相談をしたことがあった。新卒で入ったばかりの若い女性編集さんでとにかくがむしゃらに働いているようだったが、ファッション誌なので少しでも流行遅れの服を着ていたりメイクがダサかったりすると上司から注意されるとのことだった。  編集やライターの仕事なんて、頑張れば頑張るほど格好を気にする余裕がなくなっていくこともあるのに(校了前は特に)服やメイクに気を遣わないといけないなんて、超過酷な編集部だと絶句したものだった。    打ち合わせた仕事内容の中には、読者モデルを探す仕事も入っていた。彼女は街でキャッチをして読モを探しているとのことだったが、職場バレしたらまずい女性もいるので、これがなかなか大変なようだった。  当時、私の周りにはちょっとしたフリーのタレント活動をしている女性も数人いたので、その子たちに声をかけてみようかと思い「顔の可愛さはどれくらいが基準ですか?」と聞いたら「雑誌に載せられる程度の顔面レベル」という答えが返ってきた。  雑誌に載せられる程度の顔面レベル……。あまりにも抽象的で残酷な響きだった。結局その仕事は縁がなく、その編集さんともそれきりだ。今となっては、ファッション誌界隈も言葉遣いに慎重になっているのかもしれない。
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なぜ今、ルッキズム問題が注目されているのか
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