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BLドラマに「主人公の心の声」がある理由。『おっさんずラブ』からの変遷をたどる

 BLドラマ世界は奥深い。その全体像はなかなか掴みづらいものだが、ひとつ理解を深めるための補助線がある。主人公のモノローグ(心の声)である。
『おっさんずラブ』公式サイトより

『おっさんずラブ』公式サイトより

 モノローグは、BLドラマに頻出する大切な表現だ。ほとんどのBLドラマ作品で主人公のモノローグが使われる。それはなぜか。 「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、モノローグをうまく使った代表的な3作品を取り上げながら、BLドラマ世界の奥へ奥へ分け入る。

モノローグで追うBLドラマの変遷

 登場人物の心の声であるモノローグは、フランス映画、アメリカ映画、日本映画と広く世界中の映画作品で多用されている。映画に限らず、日本のテレビドラマ作品でもよく使われるごく一般的な語り方である。  特にBLドラマ作品では、必ずと言っていいほど主人公のモノローグがある。それはなくてはならないとても重要な表現方法であり、BL世界特有の効果を生み出している。  モノローグは、近年のBLドラマ製作ラッシュの流れの中、着実に進化し、洗練されてきている。逆に言えば、モノローグの使用例を追ってみるだけでも、BLドラマの変遷がたどれてしまうほどだ。

効果的に活用された最初の好例

 田中圭主演の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系、2018年)の大ヒットは、BLドラマ史上の転換点だった。天空不動産の営業所に勤務する主人公・春田創一が、「はるたん」の愛称で親しまれ、上司と後輩から同時に恋される“胸キュン”なストーリーが広く視聴者に支持されたのだ。  発端は、ある朝、二日酔いで吐きそうな春田が、通勤バスに乗っていたところ、痴漢に間違われる場面から。隣に乗り合わせていた営業部長の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が、相手女性の誤解を解いてくれ、春田は難を逃れる。が、バスが急停車した衝撃で、春田と黒澤は車内で抱き合う体勢に。  黒澤のスマホを拾い上げると、待ち受け画面に自分の写真が。さらにパソコンには数々の盗撮画像があり、春田は思わず目を疑う。なんで自分の写真が……。ここから春田の心の声がダダ漏れ状態になる。BLドラマ世界を活気づける主人公のモノローグが効果的に活用された、最初の好例ではなかったかと思う。
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主人公の繊細な感情を表現
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