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笑点レギュラー・桂宮治は元俳優志望だった!?「落語人生は妻のおかげ」と語る理由は

初舞台で負けを認めてしまった

桂宮治 僕が入った養成所は本当にちっちゃなところで、レッスンは週に三回。稽古場もなく、仲間たちと手分けして公民館の部屋を予約、きょうはこちら、来週はあちらというふうに移動しながら、自分たちでスピーカーやアンプを持ち込んでレッスンをしていました。  養成所には高校を卒業してすぐに入ったものですから社会経験はなく、芝居について大して勉強もしていませんでしたので、うまくできるわけもなく……。  初舞台では頰が震えてしまい、ひどいものでした。それもあって、最初から「自分には向いていないんだな」と勝手に思い込んでしまった。上手な先輩の役者さんをたくさん目の当たりにして「こんな役者には何年たってもなれないよ」と負けを認めてしまったんです。  普通なら、じゃあ頑張るぞ!となるのかもしれないのですが、そこから大して努力をすることもなかった。ただ、楽しいからやっていただけ。幕が開き、板(舞台)の上に立っている間は楽しかったです。

落語の役に立っているのは“パントマイム”

「俳優養成所で学んだことで落語の役に立っていることはありますか?」とよく聞かれるのですが、星先生からいろいろ学んだなかでもとくにパントマイムがよかった。何もないところで「ボールを投げる」とか「壁に触る」とか、体の動きだけで実際にはないものをお客さんの頭の中に映し出してもらう作業は、言葉でそれをする落語と似ています。  俳優(志望)時代には、飲食店とかコンビニエンスストアとか、いろいろなバイトをやりましたが、警備員のバイトをしたときに実際にはいないトラックを誘導して駐車させる研修がありました。  笛を吹きながら、トラックをバックで駐車させたあと、運転手に敬礼するところまでを実演したのですが、僕は敬礼するとき無意識に上を向いたんです。すると、教官がなんで上を向いたのかって聞くんです。「トラックの運転席って高いじゃないですか」って指をさしながら答えたら「その通りだよ。すごいね」って褒めてくれました。あれ、やっぱり俺、俳優に向いてるのかなと思っちゃいました(笑)。
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バイク事故が運命の分かれ道
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