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「今さら習い事なんて…」はもったいない!趣味も旅も60歳以降ならではの楽しみ方がある

「推し活」をはじめ、多くの人が自分の好きな趣味や好きなものを楽しめる時代。でも、新しい趣味に対して、「いまからではもう遅いんじゃないか」「こんな年齢では足を引っ張るだけでは」と躊躇してしまう人もいるかもしれません。  ただ、「それはまったく心配いらない」と語るのは、脳科学者の黒川伊保子先生です。 『夫のトリセツ』や『息子のトリセツ』などのベストセラーを持つ脳科学者の黒川先生に、大人世代が新しい趣味や刺激に向き合うときの秘訣を教えてもらいました。 (本記事は『60歳のトリセツ』(黒川伊保子著)より抜粋・構成しています)

小脳のパッケージ化が進めば、どんな趣味も体得できる

絵を描く女性

※写真はイメージです(以下同じ)

 ヒトは、「一連の動作」をするとき、慣れないうちは大脳で考えて動作するが、何度も繰り返して熟練してくると、小脳にパッケージ化されて、ほぼ無意識のうちに自然に流れるように動けるようになる。  ちなみに、小脳は「無意識」を司る器官で、空間認知と身体制御を担当している。  たとえば、私たちは二足歩行をするとき、下半身にあるいくつもの関節の角度と骨盤の傾きを制御しつつ、床の滑り具合、靴や服の様子、道幅、向こうからやってきてすれ違う人の動き、それが知人か否かなどを感知しながら、無事に歩いているのだが、これをいちいち考えながらやっていたら(「右足の親指を強めに使って、左の小指で踏ん張って、骨盤の傾きは右へ少し」とかやってたら)、とうてい間に合わない。  これらを無意識にやってのけているのは小脳で、ヒトは8歳までに「歩行」にかんする脳の演算をパッケージ化して、小脳に搭載してあるのである。  習い事はすべからく、「大脳で考えながらやる」ことを「小脳のパッケージ」に変えていく行為である。たとえば、ゴルフも、習い始めは「スタンスはこう、クラブの握り方はああ、振り下ろし方はこう」とかやるわけだけど、熟達してくると「自然に立って、すっとクラブを振ったら、ボールがカ~ンと飛んで行った」みたいになる。小脳のパッケージ化が成功したってことだ。  語学もそう。最初は、思考しながら、外国語の文章を組み立てて話すわけだけど、反射的に一連の表現が浮かんでくるようになれば、もうこっちのもの。小脳のパッケージ化が始まったってことだ。  私は、この語学の「小脳パッケージ化」が、ほんっと苦手でどうにもならない(汗)。まぁ、だからこそ、いつまでも「習う」を楽しめるってわけだけど。

いくつであっても、新しい習い事にチャレンジしよう

音楽を聴いている女性 ダンスやバレエをやる熟年世代で、「若い人のように、振り付けがすぐに覚えられない」と悩む人は多い。特に、子どもたちは驚異の速さで振り付けを覚えていくので、その差に愕然とすることもあるだろう。  実は、振り付けを覚えるのには、「小脳にパッケージ化された一連の動き」を豊富に持っていることが大事なのだ。外国語で言えば、慣用句に当たる。  たとえば、ワルツでは、「ナチュラルターン~スピンターン~プロムナードポジション~ウィーヴ~シャッセ」という一連の動作があるのだけど、44年も踊ってると、何も考えずに、ドアを開けるような自然さで、一連の動作がいつの間にか終わる。これが、小脳のパッケージ化だ。  経験豊富なダンサーたちは、このようなパッケージを山ほど持っていて、その組み合わせで、振り付けを覚えてゆく。だから、3分の振り付けをほんの2~3時間で作って、覚えきることができるのだ。そして、若い人たちは、「大脳で考えて踊る」を小脳のパッケージに変えるまでの時間が短いのである。  大人の習い事では、時間をかけて、パッケージ化していくわけだけど、私は20代に踊っていたころより、60代の今の速度のほうが好きだ。  気の合う(身体の合う)男子と、初めての技を何度も何度も踊っているうちに、自然な流れになっていくのを味わうのが、私は何より好き。初めて、ぴったり合ったときの浮遊するような快感も、二人でハイタッチして気分アゲアゲになるあの感じも最高。
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オトナの習い事でしか味わえない、新しい醍醐味とは?
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