――チコちゃんは、同級生(主人公)がネイルをインスタに投稿しているのをみてコメントやDMで「どこのサロン?」と矢継ぎ早に質問するなど、少しズレた行動や“クレクレちゃん”な行動で周囲を戸惑わせるキャラクター。ぱん田さんが、チコちゃんの物語を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
ぱん田ぱん太さん(以下、ぱん田):私が友人に「こういう図々しい人がいる」と聞いて、「ええ!? そんな人が本当にいるんだ!」と、衝撃を受けたことがそのまま漫画になっています。
「人から聞いた話をこんなに細かく描けるわけがない」という読者の声がときどきあるのですが、もちろんすべてを事細かく知っているわけではないので、聞いた話をもとにある程度の肉付けはしています。
私としては、「こういう人がいるけど、実は可哀想な人なんだから許してあげましょうよ」と訴えたいというわけではなく、作品として面白い、珍しいものを作りたい気持ちが大きいです。
――特に描きたかったポイントはどんなところですか?
ぱん田:対人トラブルを描いた作品は、シンプルにいうと主人公に迷惑を掛ける変な人が現れて、最後に成敗されてスカッとする! みたいな展開が多いと思います。
読みやすいし楽しいんですけど、そればかりだと飽きられてしまうかもしれないので、変な人の背景まで踏み込んでいく話を描きたいと思って始めました。

『欲しがるあの子を止められない とんでもないクレクレちゃんに絡まれた結果、 人生を深く考えた話』(KADOKAWA)
――執筆する上で配慮したことはありますか?
ぱん田:チコちゃんは悪役として登場するのですが、嫌な感じのデザインにならないように配慮しました。見た目でチコちゃんに対する憎しみをさらに煽ってしまうのはちょっと違うのかなと思ったんです。なるべく可愛らしいデザインにして、喋り方も乱暴にしないようにしています。
――ぱん田さんは、この物語の登場人物の中で誰に感情移入していたのでしょうか。
ぱん田:私はこの中だと、大谷さん(チコちゃんの夫の同僚の男性)です。チコちゃんの被害には遭いたくないけど、興味があるから横から口出ししてみたり(笑)。でもチコちゃんの行動に対して本気で怒ったりしないし、「まあ良いじゃん」と楽観的に構えている感じが私と近いかなと思います。