――本書では、友達とレストランに行った際に自分はサラダバーを注文していないにも関わらず、注文した友達のサラダを平然と食べ始め「ええやん。別にそっちは損なんかしてへんやろ?」と謎理論を展開するなどチコちゃんの困った行動がたくさん描かれています。チコちゃんに対して読者からさまざまな意見が寄せられたそうですが、そういった反応について、ぱん田さんはどう受け止めていたのでしょうか。
ぱん田ぱん太さん(以下、ぱん田):「私の漫画にこんなに感情移入して読んでくれているんだ!」と感激していました。正直にいうと、コメントが感情的だったり、長文だったりするほど嬉しいです。
もちろん冷静なご意見や中立的な見方をしてくれるのも有り難いですけど、個人的には思い切り共感したり腹を立てたりしながら読んでくれると嬉しいですね。
――対人トラブルのエピソードは、なぜそんなに人を惹きつけるのでしょうか?
ぱん田:普段は平穏な生活をしている人ほど、刺激を求めるんじゃないでしょうか。実際に巻き込まれたくはないけど、当事者になったような気分になってみたい。その絶妙なところを突けたらいいなと思って描いています。
あまりにも変な人だと現実味がなくて感情移入ができなくなってしまうので、悪い人じゃないけどちょっとモヤっとするくらいがいいのかなと思います。
――自分の身に置き換えながら読めるので、読者が熱くなるのかもしれないですね。
ぱん田:感情移入してくれて嬉しいのと同時に、最近のネットの傾向が現れているなと思います。芸能人の行動に対して、物凄く怒ってネットに書き込む人が多いのと似ているかもしれません。それがいけないという訳ではなく、そういう傾向も含めて実験的に楽しみながら描いています。

『欲しがるあの子を止められない とんでもないクレクレちゃんに絡まれた結果、 人生を深く考えた話』(KADOKAWA)
――ぱん田さんが漫画を描き始めたのは、ドイツ生活の様子を描いたブログを始めたことがきっかけだそうですが、なぜ移住したのでしょうか?
ぱん田:私は音大出身で、ドイツの音楽を勉強したことがきっかけで興味を持ってワーキングホリデーでドイツに来ました。最初は旅行で来るのが普通だと思うのですが、いきなり暮らし始めたのは若気の至りでしたね(笑)。でも住んでみるとすごく楽しかったです。
オープンな人が多くて、知らない人同士でも電車の中やお店でスモールトークができるところが好きです。ビールやチーズ、ライ麦パンなど、ドイツの食べ物が自分に合っていたのも大きかったです。
――現在はドイツで子育てをしながらブロガーを続けられていますが、両立は大変ですか?
ぱん田:私は描くのが早いほうで、今は子どもが幼稚園に行っている間にパパッと描いてしまうので大変ではないです。締め切りはないですけど、「子どもを迎えに行くまでに済ませなくちゃ」というのがモチベーションになるので、時間に制約があったほうがむしろ捗ります。
ドイツは犬と子どもに優しい国と言われているらしく、子連れで楽しめる場所がいっぱいあるし、多くのレストランに子どもの遊び場が併設されていて外食も困らないので不満は何もないです。