
Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』(Netflixにて独占配信中)
――“炎上”というと、ずばりタイトルにも入っている引きのある言葉です。
春名P「このタイトルには惹かれました。令和のいま、アマゾンと聞いて、ジャングルを思い浮かべる人のほうが少ないですよね。それと一緒で、炎上と聞くと、物理的な火事より、SNSの炎上のほうを想起しがちです。このタイトルには、“炎上する”が、ダブルミーニングになっている妙味があります。
最初の火事は、もちろん大事件であり物語の発端ですが、そこから杏子の心のなかではメラメラと復讐の炎が燃え続けていて、やがてそれが真希子とのバチバチの関係に引火していき、真希子は真希子でSNSで自己実現、承認欲求を満たそうとするあまり、皮肉にも「炎上」に足元をすくわれる。
復讐が成功して、『はい、終わり』ではない。炎(炎上)というキーワードによって人間関係の輪が繋がる感じが、人間ドラマとして、映像化したいというモチベーションになりました」
――ところで春名プロデューサーは本当に数多くのヒット作を手掛けてきました。『世界の中心で、愛をさけぶ』を世に放った時は30代半ばです。ヒット作を生み出すために、意識されていることはありますか?
春名P「僕はいわゆる映画少年でも映画青年でもなかったんです。むしろ映画を観に行かない人だった。だから、そんな僕が観に行きたくなるような映画を作らなきゃと思っています。映画への造詣が浅く、ミーハーなんですよ(笑)。映画論を問われても、僕は答えられない。だけど、その代わりに、観客代表のつもりで、監督や脚本家と対話をしながらプロデュースしています。
今回、映画プロデューサーとして連続ドラマに挑戦するにあたって、とても信頼する、そして多くの秀作ドラマ作品を手掛けてきた平川監督、脚本の金子さんとともに、映画的な省略の美学と、連続ドラマ的な説明の美学をうまく融合させながら作りました。とにかく音楽でいうBPMを落とさずに最後まで見届けてもらえるように。
1話目でも、『母が記憶喪失で』とか『2階に謎の男がいます』とか、だいたい5分ごとに何かしら新しいインシデントがちゃんと起きるように配しています。これから観る方は没入して、すでに観ていただいた方には、今度はそこを意識して観てほしいです」
<取材・文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi
Netflixシリーズ「御手洗家、炎上する」はNetflixにて独占配信中
春名慶:1969年生まれ。映画プロデューサー。主なフィルモグラフィーに、『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いにゆきます』『神様のカルテ』『僕等がいた』『アオハライド』『ストロボ・エッジ』『僕だけがいない街』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『君の膵臓をたべたい』『今夜、世界からこの恋が消えても』など。