「復讐しても終わらない」Netflix『御手洗家、炎上する』に秘めたプロデューサーの“炎上”への思い
7月13日の配信スタートから、世界ランキング上位をキープし続けている日本発のNetflixシリーズ「御手洗家、炎上する」。
前編に続く後編では、文字通り御手洗家を“炎上”させた撮影秘話も登場します。
【前編を読む】⇒「泥沼展開は意識していない」なぜ世界2位?プロデューサーが語るNetflix『御手洗家、炎上する』が支持されるワケ
※記事内はネタバレを含みます。
――今回、舞台として登場するリビングも、存在感があります。
春名慶プロデューサー(以下、春名P)「韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』のあの邸宅が作品世界に寄与したように、本作でも重要な“登場人物”が、御手洗邸、特にリビングだと捉え、監督や美術スタッフと議論を重ねました」
――具体的にこだわったのはどこですか?
春名P「原作でも象徴的な大階段です。これは、物語におけるメタファーとして、結界だと解釈しました。
たとえば1階が現在で、2階が13年前。階段は杏子にとって13年前を取り戻すために行き来している結界で、だからこそ真希子は2階に行くことを禁じている。僕としては原作を読んでいるときから、そこにひとつのメタファーがある気がなんとなくしていました。
美術という点だけじゃなく、最終的な演出の意味でも、あの階段は象徴的に描かれてほしかったし、平川監督にも『禁じられた結界を行き来する杏子の姿は、丁寧に追ってください』とオーダーしていました。7話の頭で真希子が『私がやりました』と自白するのもあの階段が舞台ですしね。この物語のランドマークになったと思います」
――冒頭で、御手洗家が文字通り“炎上”します。あの火事のシーンでは、オープンセットを実際に燃やしたと聞きました。本当ですか?
春名P「本当です。元採石場をお借りして、13年前に杏子たちが住んでいた旧御手洗家のセットを組みました。そこで、リビングでのシーンなどを撮影し、すべて撮り終えたあとに燃やしたんです」
――外側だけでなく、旧御手洗家のリビングも作って撮影してから、燃やしたんですか?
春名P「そうです。そんなにシーン数は出てきませんが、幸せだった杏子たちの風景や、かつての真希子たちが来てご飯会をしたりといったお芝居を撮ってから。もちろん今はCGの技術もすごいですから、作ろうと思えばできると思いますけど、でもやっぱり精巧に作りすぎても何かが違うんですよね。
以前、『世界から猫が消えたなら』という映画で、イグアスの滝に30時間以上かけて実際にロケ撮影に行ったのですが、出来上がった映画を観た業界仲間から、『あのイグアスはよく合成できてたね』と言われた経験がありまして(苦笑)。
確かにCGでも描くことは技術的に可能な時代ですが、御手洗家を実際に燃やすことで出せる臨場感みたいなものがあると、制作陣もみんな信じていたから、燃やすと決めたのだと思います」
永野芽郁さん演じる主人公の村田杏子が、鈴木京香さん扮する鬼のような女性・御手洗真希子に挑んでいくリベンジものです。
全8話ながら「見始めると最後まで止められない!」とイッキ見必至と評判の本作を手掛けた春名慶プロデューサーにインタビュー。
御手洗家の大階段は現在と13年前を隔てる結界
冒頭の炎上シーンは、実際に旧御手洗家を作って燃やした!
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Netflixシリーズ「御手洗家、炎上する」はNetflixにて独占配信中
春名慶:1969年生まれ。映画プロデューサー。主なフィルモグラフィーに、『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いにゆきます』『神様のカルテ』『僕等がいた』『アオハライド』『ストロボ・エッジ』『僕だけがいない街』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『君の膵臓をたべたい』『今夜、世界からこの恋が消えても』など。