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子どもを性犯罪から守る「日本版DBS」に「働きたい人の権利は?」の声も…。加害者治療にあたる専門家の意見は #こどもをまもる

加害者の治療的にも「日本版DBS」は有効

 また、日本版DBSは子どもと関わる仕事に対象が限定されるため「就労希望者の職業選択の自由は守られる」と斉藤氏は指摘しつつ、性犯罪再犯防止プログラムで用いられている認知行動療法の視点から解説します。 「例えばアメリカでは、性犯罪者の住所や犯罪歴などの情報を州当局が住民に一般公開することを認める『ミーガン法』などが施行されていますが、日本版DBSに関しては、あくまで管轄省庁が情報を厳格に管理しながら無犯罪証明書を発行するシステムをとっているので、子どもに関わる業種以外の職業選択の自由は限定的ですが保証されています。  また、性犯罪再犯防止プログラムで第一選択治療法として用いられる認知行動療法的視点から考えても、ハイリスクな状況や引き金を避けるというのは再加害防止の大原則です。プログラムを受講している対象者は、みなこれを原則に子どもと関わる状況を適切に回避しながら再加害しない日常を積み重ねていきます。  そういう意味では、今回の日本版DBSは社会復帰する入口段階で子どもと接する職種が選択できない仕組みは、治療的にも有効であると考えています。そういう意味では、社会の中で生き直しをはかっていきたい当事者を守る制度であるという見方もできるのではないでしょうか」

すべての大人に求められることは…

小学生 日本版DBSはあくまで再犯防止に有効な施策であるとともに、子どもの性被害は示談も含め統計に現れない暗数が非常に多いため「初犯を防ぐこと」についても議論を進める必要があるといいます。  子どもの安全確保を本質的に実現させるためには「制度導入だけでなく社会全体の意識が変わらなければならない」と斉藤氏は指摘します。 「日本社会には、子どもを性の対象として見る大人がいるという事実をあまり深刻に捉えないような風潮があります。特に、同性間で起こる性加害に関しては認知されていないように感じます。例えば、長年にわたり繰り返されてきたとみられるジャニー喜多川氏の性加害問題が、昨今になってようやく大々的に取り上げられた現状にもはっきりと表れていると言えるでしょう。  先ほど話したように、性暴力は環境を問わず『強い立場にいるものによる加害行為について、弱い立場にいるものが口外できない/しづらい』ような“構造”によって発生するものです。特に子どもは社会経験も少なく、生きている世界も狭いため、容易に大人の言いなりになってしまいやすい。  小児性犯罪の加害者は、そうした力関係を巧みに利用し、グルーミング(性的虐待を行おうとする者が、被害者となりうる未成年者に近づき、感情的なつながりを築いて手なずけ信頼を得る行為)しながら犯行に及びます。  親御さんはもちろんですが、子どもに関わるであろうすべての大人に、性暴力が発生しやすい構造や加害者の行動パターンについてもっと理解が広がっていってほしいです」  9月6日には、性被害の当事者や斉藤氏を含む加害者臨床の専門家らでつくる団体がこども家庭庁に、幅広い職業を含めるよう要望書を提出しました。今後の動きにも注目です。 <文/すがはらS>
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