それで向井理が孔明を演じることがまず発表されたとき、これはもしやおディーン様もくるのでは? と予想すれば、的中というわけだ。では、実際の画面上でのディーン演じる劉備はどうだろう。
これがうまくひねられている。別に直球で演じても相当インパクトある劉備になるはずが、さらに視聴者に印象づけるべくこれまた大胆なギミックで工夫されている。
基本的に孔明の回想中に登場する劉備は、終始なぜかカメラ目線でこちらに語りかけてくる。
これはSNSで流行りの「#彼氏とデートなうに使っていいよ」(デート中のさりげない姿を彼女視点で撮影したかのような写真に添えられるハッシュタグ)的なギミックではないかと思ってしまった。そしてこれが参ってしまうくらいカッコいい。
「戦いのない世を共に創ろう」と吹き替えではないディーンの肉声による中国語が画面全体に響き渡る。三国志ファンなら、劉備と孔明の固い絆に胸を熱くするものだが、このギミックによりディーンを通じた劉備をより身近に感じるような体験ができる。
例えば、孔明が軍師として仕えることになった月見英子(上白石萌歌)がギターをかき鳴らす間、ふと回想される場面。カメラ目線の劉備がこちらに手を伸ばす。
やや煽りのアングルから捉えるため、視聴者は思わず見上げる姿勢になる。さらに竹藪を歩く最中に向けられるまっすぐな視線など。
しかもこんな深い声色で囁かれたら、そりゃもう男女問わずメロメロである。「#彼氏とデートなうに使っていいよ」的なギミックだけでなく、言わばディープなディーン・トーンも響くというダブルパンチ。
そんな映像を回想する孔明自身も軽くめまいを覚えるくらい、恍惚とした表情を浮かべる。
もしかして孔明は恋してるの? と勘繰ってもしまうくらいおディーン様によるこの劉備像は、インパクトが強い。