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枯れたおじさんと不倫する、田舎住み25歳女性の胸のうち。“純粋に”恋に突っ走る恐ろしさ|ドラマ『泥濘の食卓』

「私は彼と幸せになりたい」欲求に向かって走り出す

 那須川に別れを切り出され、「自分の何がダメだったんだろう」と考えて一睡もできなかった深愛。こういう女性は相手を責める言葉を持たない。自己肯定感が低すぎる人は、何があってもすべて「自分のせい」だからだ。そして、彼女は自分だけの中に埋没していく。
『泥濘の食卓』

©テレビ朝日

 「私は彼と幸せになりたい」  その欲求に向かって彼女は走り出す。那須川のほうは、深愛と職場で一緒にならないようにシフトをずらしている。だが彼の思いを忖度するという発想が深愛にはない。それが純粋というなら、限りなく純粋なのだが、通常、世間では「人の気持ちが想像できない人」とレッテルを貼られるかもしれない。  彼女は仕事上、那須川の住所を知ってしまう。そして1週間、彼のマンションを見張るのだ。どこか疲れたような那須川の表情を、純粋な瞳で見続ける。

お互いに現実逃避する、ある意味“最悪の組み合わせ”

 この不倫は、ある意味で最悪の組み合わせだ。毒親に否定され続けた女性は、認めてくれる人を心底求めている。アラフィフの男性は、妻が精神的に病み、家庭が崩壊するのではないかという危機にある。そんなふたりが結びついたら、現実逃避しかない。現実逃避の不倫は、お互いに自分を見ているだけで相手への共感や愛など生まれようがない
『泥濘の食卓』

©テレビ朝日

 ドラマの中では、そこから目覚めたのは男性のほうだった。あと一歩進んだら家庭が崩壊すると感じたのだろう。だから別れを切りだした。この時点で、那須川は深愛の怖さには気づいていない。 「善」だけで動く深愛が怖い。彼女に客観的判断はない。常に自分が自分の中に埋没しているから、親に押しつけられた「とりえのない自分は人の役に立たなければ」という固定観念だけで突発的に行動していくだろう。2話目はもっと怖くなりそうだ <文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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