現場での亀梨は、冷静でありつつ、ずっとフツフツと燃えていた
――染谷さんは、ほぼ亀梨さんとのシーンでした。
染谷「モノづくりに対して、とても誠実な気持ちを持たれているのだろうということが、すごく伝わってきました。いつも冷静に現場にいらっしゃるんですけど、でもずっとフツフツと燃えている感じがありました。自分としては、相手に影響されない役がベースだったわけですけど、二宮と対峙したとき、“どう見られているんだろう”という気持ちになるときがありました。二宮を掴めそうで掴めないみたいな瞬間が、自分の中で結構ありまして。それって影響を受けちゃってるんじゃないかと」
――それは杉谷としてですか? それとも染谷さん自身が?
染谷「両方だったんじゃないかと思います。亀梨さんの、あの二宮の魅力に引き込まれないようにと思って演じていました」
――サイコパスではありますけど、その揺れはまさに杉谷の心情を表していますね。
染谷「後半のあの感じ、すごく好きでしたね。急に不安になってきて。迷うサイコパスっていう(笑)。ある意味、ピュアですけどね。“え、君がそういう感じなら、僕、君のことを消さなきゃいけなくなるけど、僕、どうしたらいいの?”みたいな。演じていて楽しかったです」
――ありがとうございます。最後に監督にお尋ねします。いちジャンルとして、サイコパス映画が根強い人気なのは、なぜだと感じますか?
三池監督「実際のサイコパスって、みんな犯罪者なわけじゃないし、言ってしまえば頭もさして良くなくて、スマートでも二枚目でもないんです。それを映画では、下に見られるスーパーアイドルという虚像を作り上げる」
――下に見られるスーパーアイドルですか。
三池監督「たとえば、昭和のヤクザ映画を観て、“あんな風に生きられたら”と喝采を送りながら同時に“ひどいヤツだよね”と下に見る。それにちょっと似ているというか。忖度なしに、思いっきり生きているところに惹かれるんじゃないですかね。しかも仰ぎ見るんじゃなくて、“最低だ!”と下に見ながら、心の中で“すげえな”と思えるという。つまり、下に見られるスーパーアイドルだからなんじゃないですかね」
<取材・文・撮影/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi