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“BLスレスレ”の『おっさんずラブ』がここまで人々のツボにハマった理由

おっさん同士という選択

『オオカミ少女と黒王子』DVD(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

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 特定ジャンルの作品が量産されるということは、当然、良作、駄作の玉石混交状態となる。  かなり熱心なラブコメ映画ファンだった筆者ですら、作品数の多さにも関わらず、山﨑にとって決定的な主演作にして、巨匠・廣木隆一監督による『オオカミ少女と黒王子』(2016年)や新庄毅彦監督作『ひるなかの流星』、三木孝浩監督の『ホットロード』くらいしか名作と呼べない。  正直、作品の良し悪しは、出演俳優ではなく、演出家(監督)の才能でほとんど決まってしまう。供給源として多くが漫画原作に依存するBLドラマでも事情は同じ。 『チェリまほ』や『美しい彼』(原作は凪良ゆうの小説作品)を除けば、古厩智之監督による力強いワンショットが散りばめられた『飴色パラドックス』(MBS、2022年)以外に良作を見つけるのが難しい。  いい演出家不在の下で、若者同士のわちゃわちゃを見せられたとて、ドラマとしての良質さや面白さとは別の話。その点、『おっさんずラブ』のおっさん同士という選択は、中堅からベテラン俳優の芝居をじっくり楽しめる。 『きのう何食べた?』(テレビ東京、2019年)や『先生のおとりよせ』(テレビ東京、2022年)もアプローチが似ているが、程よく少女漫画的なドラマ展開が視聴者を飽きさせないし、徳尾浩司によるオリジナル脚本であることもうまく機能していたように思う。

中間領域的な準BL作品

『おっさんずラブ』は、いい加減のちょうどよさが、エンタメとして多くの視聴者のツボにはまったのだ。はっきりとしたBL描写を描かないことでむしろ、自由な中間領域でドラマが仕上がる。 “はるたん”こと春田創一を演じる田中圭や吉田鋼太郎、林遣都との抱腹の三角関係が、萌え要素を絶えずチャージすることも忘れない。ティーンエイジャー同士の青臭さにはない、おっさんだからこその切なさもコミカルなスパイスになっている。  言わば、中間領域的な準BL作品の魅力。不動産会社から航空会社に舞台を変えた続編『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日、2019年)は、かなりカオスな様相だったけれど、今回のシーズン3である『リターンズ』は、どれほど意気込んできたかなと放送前から、期待を寄せた。
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家事代行として再登場
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