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“BLスレスレ”の『おっさんずラブ』がここまで人々のツボにハマった理由

 おっさんとおっさんが、あんなにも真剣に気持ちを伝え合い、葛藤する。『おっさんずラブ』(テレビ朝日、2016年)はときめきの宝庫だった。
テレビ朝日 金曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』

テレビ朝日 金曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』公式サイトより

 設定や関係値をゼロに戻した続編や、てんやわんやてんこ盛りの劇場版を懐かしく思う。  そんな間もなく、正統なる続編にしてシーズン3となる『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日、以下、『リターンズ』)が、毎週金曜日よる11時15分に放送されている。 「イケメンとドラマ」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、BLドラマ作品の状況を整理しながら、『リターンズ』を楽しむ醍醐味を考える。

『おっさんずラブ』は“BLすれすれ”の作品

『おっさんずラブ』とはいったい、なんだったのか。おっさんとおっさんの恋愛模様。単にそれだけなら、それまでにも類似のドラマ作品はあったし、第一、あれだけの社会現象にはならなかっただろう。  質問を変えよう。『おっさんずラブ』はなぜ広く視聴者から支持されたのか。あるいは、なぜエポックメイキングとなり得る作品となったのか。まず確認しておくべきは、同作は厳密にはボーイズ・ラブを描いた、いわゆるBL作品にはカテゴライズできないこと。  すくなくとも、BL的な要素を十分持ちながらも、あえてBLすれすれのところで、同ジャンルに含まれることを回避しているように思われる。これが『おっさんずラブ』を語ることの大前提だと筆者は考えている。

BLドラマ空前の黄金期

通称「チェリまほ」『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(画像:テレビ東京公式サイトより)

通称「チェリまほ」ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(画像:テレビ東京公式サイトより)

 確かに『おっさんずラブ』以降、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京、2020年、以下、『チェリまほ』)や『美しい彼』(MBS、2021年)などの名作BLドラマは放たれやすい製作環境になった。  MBSが毎クールBL作品を放送する「ドラマシャワー」枠を1年間限定で2022年に新設し、継続された2023年は、BLドラマ空前の黄金期の幕開けだった。  これはちょうど山﨑賢人が実写化王子の異名を取り、少女漫画を原作としたラブコメ映画作品が量産された2010年代中頃から後半の勢いを思わせもする。当時のラブコメ映画は、興行的にも10億円を超えるヒット作を連発していた。  ラブコメ映画が振るわなくなった現在、その代替としてBLドラマが名乗りを上げ、頭角を現すのは必然的かもしれない。でもその一方、そろそろゴールデンプライム帯にBLドラマが放送されてもいい頃合いだけれど、早くも飽和状態を否めないところもある。
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おっさん同士という選択
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