
ですがどうしても指輪に心残りがある涼子さんはつい、政樹さんと半同棲していた部屋の周りをウロウロしてしまいました。
「もう鍵も返してしまったし、不法侵入する訳にもいかないのでどうしようもないのですが…。あ、でもやっぱり政樹に会いたくないので、彼がいない時間を狙って行きましたよ」
すると、そのマンションの前を涼子さんが通り過ぎようとした瞬間に、偶然、政樹さんの部屋の玄関が開いたそう。
「うわ、ヤバい!と思いとっさに隠れたのですが、出てきたのはモデルさんみたいにキレイな女性でした。そして政樹お気に入りのロンTを着ていたので、きっと新しい彼女だろうと思ったんです」
涼子さんはその瞬間「ここは恥も外聞もかなぐり捨てて、この女性に指輪を取ってきてもらうしかない!」と思い、勇気を出して彼女に話しかけてみました。
「もちろん最初は不審がられましたが、私が部屋の中を細部まで知っていることと、その後ここに私宛の荷物が届いたことがあったらしく、彼女がその宛名を見て私の名前を覚えていてくれたので、信用してもらうことに成功したんですよ」
そして無事に大事な指輪を回収することができた涼子さん。
「ですが彼女が『今から私と一緒に、政樹さんに電話してもらってもいいですか?ここは私の部屋ではないので念のため』とスマホを取り出したんですよ。
そりゃそうか、当たり前だよねと思いつつ『もう政樹とは関わり合いたくないので、この指輪は諦めます』と帰ろうとしたら、その落胆ぶりが彼女に伝わったのか『訳を聞かせてもらえますか?』と引き留められたので、つい堰を切ったように今まで政樹から受けたモラハラの数々をぶちまけてしまったんです」
彼女は政樹さんがモラハラ男なことは全く知らず、驚きながら話を聞いていました。
「すると彼女は『心配しなくていいから、これは持って帰ってください』と指輪を渡してくれて…。本当にありがたくて何度もお礼を言って帰りました」