「夫とはそれからも性的な関係はありましたが、やはりきっちり避妊されてしまう。だんだん虚しくなってきて、私は行為を拒絶するようになりました。同時に、早くしないと出産できなくなってしまうという焦りがだんだん激しくなってきています」
子どもがいらないなら離婚して、とつい先日、夫に叫んでしまったという。夫は静かな口調で、「それもしかたがないよね」と言った。

「夫はそろそろ起業したいと考えているみたい。だから子どもはもてない、と思い込んでいるんです。でも大変でもいい、私は子どもがほしい。
義母も実母も、悪気はないんでしょうけど『子どもはまだ?』と言うんですよ。義母に全部打ち明けてしまおうかと今、思い悩んでいます」
こんなことで苦しむとは思わなかった、彼もごく普通に結婚する段階で子どもを受け入れるつもりだと思い込んでいた、とアカリさんは何度も言って涙ぐんだ。
あと1年、あと1年と引き延ばして結婚4年がたってしまった。もう時間がない。年内に彼の考えが変わらなかったら、「年末に引っ越します」と彼女は力なくつぶやいた。
結婚後の青写真をきちんと作りすぎて計画通りに生きていくのも、あまり楽しい人生とは思えない。だが、子どもをもつかどうか、それぞれがどういう仕事のしかたをしていくかくらいは、ゆるくでもいいので、すり合わせておいたほうがよさそうだ。自分が「当たり前」だと思っていることが、相手には「当たり前ではない」こともあるからだ。
自分の常識は他人の非常識。これは結婚相手を選ぶときにも頭の隅に置いておきたい言葉かもしれない。
―シリーズ「
結婚の失敗学~コミュニケーションの失敗」―
<文/亀山早苗>
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