
このあたり、変に気を遣わず素直に教えを乞(こ)う、えむふじんさんと、頼まれたら断れずに世話を焼くえむしさん、という調和がすでに築かれていたのですがが、当人たちは名もない関係性に戸惑ってしまうのです。
私達は、名前がつくとどこか安心しますよね。たとえば体調を崩した時、原因が判明して病名がつくと安堵します。なぜなら解決策が見いだせるから。とはいえその分、不安もつきまといます。
人との関係性も同じではないでしょうか。友達、恋人、妻、夫。カテゴリーに分類されると、そこに自分をあてはめられるので、今後の思考や行動もスムーズに決められるのです。
ただ、人との関係性はむろん相手があってのこと。こちらが「恋人」認定しているのに相手が「友達」認定していたら? 不安をとおりこして絶望してしまうかもしれません。
偶然の出会いから、気の合う時間を過ごし、会い続けるのが必然になってからも、ふたりは大いに悩んでしまうのです。
「あきらかに友達以上だし、恋人確定じゃないの?」というのは、客観的に見られる一読者としての感想です。でも、お互いが疑心暗鬼になって、心理的な距離を詰めたり離したりするのがジワるのです。お互いがここまで臆病(おくびょう)になっているのには、大きな理由がありました。
すぐ先に控えた、えむふじんのアメリカ留学です。仕事に特化した資格取得のためですから、今さら却下はできません。いざ付き合うとなったとしても、すぐに離れ離れになってしまいます。この現実は、かなり重くて悲しいですよね。
このままふたりは、明らかに意識している友達、として終わってしまうのか? いいえ、一見してピンチな状況の中にこそ、一発大逆転のチャンスが潜んでいます。障害があったからこそ、ふたりの心に勇気が芽生えたのです。
付き合って0日から結婚の第一歩へ。ふたりがつかんだ、てんやわんやの幸せを、あなたもぜひ味わってください。