言葉が広まる過程を経ている、ということなのですね。
「そうですね。でもだからこそ、僕たち医療従事者が正しい知識の啓発を続けなきゃいけない。それがとても重要だし、大切です。
それに僕は、発達障害を自称する人が増えることはそれほど悪いことだとは思っていないんです。診断数自体も増えているし、だからこそ『自分も診断されていないけれど困ってる』『まだ病院には行けていない』という人々も増えている。
言葉が浸透することで、今まで声を上げられなかった人たちが上げやすくなっている、そんな気がします」

しかし世の中には、昨今の発達障害の過剰診断を問題視する声も少なくありません。
「今、発達障害に悩む方がなぜこんなに増えているのというと、ひとつは“時代の変化”が原因だと思います。技術革新によって、社会や産業の構造の変化が進んで、人間は単純作業から頭脳労働が中心になった。
こうした社会ではどうしても高い知的能力が求められるので、集団の中で相対的に低い人は、劣等感を抱きやすかったり、集団から疎外されたり、労働市場から締め出されてしまうことが増えています」