スーパーやコンビニの冷凍食品・総菜の実力が上がっている

ファミリーマートではこだわり食材を使ったグラタン、名店監修のパスタやスイーツが登場している
そしてもう一つ、今後さらに増えてくる可能性のある不満があります。それは、大手スーパーマーケットやコンビニにおける飛躍的な商品力向上から生まれるもの。
例えばコンビニの冷凍食品を見てみましょう。価格帯は200円台~500円台までの商品が多く、こだわりの国産食材を使用したり、有名レストラン監修の商品は珍しくありません。
特にセブンイレブンではデニーズ監修のメニューが登場。ビーフシチュードリアや蟹トマトクリームグラタンにただならぬこだわりを感じる人は少なくないはずで、新商品発売の頻度が高いのも、コンビニの強みになっています。

セブンイレブンでは、デニーズ監修のプレミアムな冷凍食品が購入できるように
つまりコロナ禍を経て、中食(外食と内食の中間に位置する食事のスタイルで、店舗や工場などで調理されたものを自宅で食べること)の需要が成長した今、店舗拡大や価格維持によって制限された“サイゼの変わらないメニュー”に独自性や優位性を感じにくい時代が到来しているのです。
そう、敵は中食。サイゼで食べなくてもおいしいイタリアンは食べられる経験をした人が、ある日サイゼに来店してがっかりする。競合となる商品の実力に気がついているかどうかの問題です。
競合比較によって生まれる不満はすでに存在し、今後はさらに増大してしまう可能性が考えられます。このような視点から考えれば、頑なに価格維持にこだわるサイゼの戦略にはそろそろ限界が出てきてもおかしくはありません。
サイゼリヤは脱ファミレスを宣言し、健康を考えたファーストフード、ファーストカジュアル(手軽に食事ができること)を追求する戦略を推し進めています。
今ではお客一人一人の声がSNSの力によって大きな力を持ちうる時代ですから、今後はじわじわ広がっていくかもしれない、ある日突然爆発してしまうかもしれない不満に対してサイゼがどう応えていくかは、ますます大きなカギを握るようになるでしょう。
さあみなさんは、今のサイゼリヤに満足していますか? 不満を持っていますか?
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>