イケメンだけど男臭くはなく、性格も人当りもよく、安心感も頼りがいもあるけれど、後腐れもなさそう。女性から見たパンナコッ太君の印象はこんな感じでしょうか。
間違いなくモテ系男子ですが、悪い匂いがしないぶん、都合よく扱われてしまいます。ゆえに、女性達の勘違いをもろに受けてしまうのです。
最初にパンナコッ太君をおそったのは、義姉の誘惑。義姉自身のメンタルもブレブレで、なぜか夫(パンナコッ太君の兄)には胸の内を告げずに手近で親身になってくれるパンナコッ太君にすりよります。幼少期、母の不倫によって両親の離婚を経験したパンナコッタ太君にとって、身内の浮気は許しがたいものでした。
そもそもなぜ、大切な家族に心をさらけ出さないのか。悩みがあるならまず夫なり妻に相談すべきではないのか。過去のトラウマが起因して、パンナコッ太君のマインドも潔癖に傾いています。しかたのないこと、どうしようもないこと、というのが時に人間関係に生じて、夫婦や家族だからこそこじれるというのを、認められないでいるのでしょう。
既婚者との職場不倫を経て別の男性と結婚、今度は自身がサレ妻になったババロアさんは、今や一児の母。酸いも甘いも知るパンナコッ太君とは、男女を超えた友人同士です。ババロアさんも家族3人で穏やかに暮らしていると思いきや、まさかのトラブル。夫が失踪したのです。
子育て、育休、仕事復帰、大変なのは男性も同じで同情の余地はあるものの、雨降って地固まるというわけにはいかないのが、このシリーズのクセの強さ。自分のヘタレっぷりを棚に上げてキャバクラに逃げ込む、ババロアさんの夫に理解が追いつきません。かつての浮気をポリアモリーにすり替えて正当化した夫だけある、とあきれるやら、感心するやら。「こういう人いるよね」と苦いため息をつきながらも、ページを繰る手が止まりません。
フィクションよりもノンフィクションのほうが、時に残酷で愚かだというのを本作はおしえくれます。「(夫の)捨て時」というパンナコッ太君の言葉がまた言い得て妙で、読者としては「そうだ、クズ夫を捨ててしまえ!」と応戦したくなりました。しかしクズに慣れ過ぎたのか、執着が過ぎるのか、ババロアさんの出した結論は、パンナコッ太君にとって諸手を上げて賛同できるものではないのです。