糖質制限ダイエットが横行しつつも、続かないわけ。太古の昔から、糖質=炭水化物が人類のエネルギー源だったから。
むやみに炭水化物を抜くと私の場合は人間らしさが保てなくなります。行きつく先はドカ食い。人間、生きていくためにはエネルギー、すなわち炭水化物が必要なのです。
白米やパスタをひとりで吸うように食べる。誰もが抱く夢を本書が叶えてくれました。「不本意なのに食べ終えるのが異様に難しい食べ物」として。
永田さんにとって「食べ始めると食べ終えるのが難しい食べ物」は「実家のカレー」と「実家のスパゲティ」。
カレー×白米のコンビは、味変しても裏切らないおいしさがあります。熱くても冷めても、具材が形をとどめていても正体不明でルーと一体化しても、おいしさの計算式が複雑になるだけでおいしいの枠からははずれません。
炭水化物×脂質は、人類をダメにする、いいえ、人類を最高潮の快感へと導く最強タッグなのです。
有限の「実家のカレー」が誘発するのは、無限の実家以外のカレー。「実家のカレー」のジェネリック品を求め、コンビニで市販のカレーやカレーまんやカレーパンをゲット。「カレー~2nd season~」のスタートです。
人間には理性という装置が備わっているので、ダメな快感を排除すべく、嘔吐スイッチがオンされます。食材や時間がもったいない、とあなたは思うでしょうか。思うかもしれませんが、本書に描かれているのは最高潮のおいしさと極限までの幸福感なのです。
昔ながらの、食べ物を無駄に…、とか、食べ物に敬意を…、などの格言がぶっとんでしまうほど、自分の欲に忠実なのではないでしょうか。ある意味とても潔く、爽快なのです。
カップラーメン然(しか)り、うどん然り、麺というのは水分を吸収してかさ増しします。コシや弾力がなくなるからNGとする人もいれば、増量ウエルカムな人もいます。永田さんはもちろん後者。
しかもヘタッと怠惰になったスパゲティって、郷愁というスパイスも加わるのですよ。給食やお弁当で食べたスパゲティを思い出しませんか。
できたてスパゲティ→のびてきたスパゲティ→冷蔵保存して容器の形にひとかたまりのスパゲティ、この三段活用が永田さんのデフォルト。
日本人の私達には、煮込みうどんに通じるクタクタで膨(ふく)らんだ麺が好きという趣向が、DNAに刻まれているのかもしれません。