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260万回再生の動画「福井に来たらいいと思う」で面白さ爆発。“刺される覚悟”で改革を続ける、老舗旅館の若旦那の想い

大バズりしたショート動画、イケメン男性3人(NipponBoyz)による「タイに来たらいいと思う」をご存知でしょうか。そして、なぜかその福井県バージョンを制作し、260万回(※2025年2月時点)という驚異的な再生回数を記録しているのが、福井県の老舗旅館「あわら温泉 グランディア芳泉(ほうせん)」。 若旦那の山口高澄さんが旅館のSNSチームとともにこの動画を企画し、なんと自ら出演をしています。一見、ただのおもしろ動画に見える「福井に来たらいいと思う」ですが、そこには大手旅行会社を退職し、福井県を盛り上げるために奔走する山口さんの覚悟が込められていました。
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「地方で旅館業をやっても未来はない」と言われて

――山口さんは現在、福井県のグランディア芳泉で若旦那として旅館の常務取締役をされていますが、以前は大手旅行会社にお勤めだったとか。会社を辞めて現在に至った経緯を教えてください。 山口高澄さん(以下、山口)「『グランディア芳泉』は僕の祖父が創業した旅館で、僕はここで生まれ育ちました。その後東京の大学に進学し、卒業後は旅行会社のJTBに入社。金沢支店で営業として3年ほど働いた後、実家である旅館に戻ってきました」
福井県「あわら温泉 グランディア芳泉」若旦那の山口高澄さん

福井県「あわら温泉 グランディア芳泉」若旦那の山口高澄さん

――見聞を広げたうえで、実家の旅館を継ぐために戻ってきたということですね。 山口「いやいやいや……。実家に戻ってきた当初は、そんなにかっこいいものでもなかったですね。会社を辞めるときも、『地方で旅館業をやっても未来はないぞ』と言われて心が揺らいだりもしました。そもそも、小さい頃は自分の家が旅館をやっているというのも嫌だったんです」 ――それは意外です。 山口「グランディア芳泉は昨年60周年を迎えたのですが、先代が作り上げてきた旅館なわけです。僕の意思は関係なく、生まれた時から自分の生活の一部としてそこにあったものなんですよね。 グランディア芳泉に限らず、僕の知る限り当時の旅館業では、今のように仕事とプライベートを分けるという発想もなくて、家族も従業員もいつも一緒にいる状態でした。それが若い頃の自分にとっては窮屈だった部分もあります。 あとはやはり、『旅館の息子だから旅館を継ぐんでしょ?』という決められたレールに乗ることに反発していた時期もありました」

他の観光地を知れば知るほど、あわら温泉の良さが分かってきた

――そこから、どのように“若旦那”になられたのでしょうか。 山口「やっぱり、自分が旅行会社で何十、何百という観光地や旅館を知っていく中で、福井県もあわら温泉も先代が作り上げてきた旅館もすごくいいものだなという実感が湧いてきたんです。当時はなんの根拠もなかったんですけどね。他の観光地や旅館を知れば知るほど、一番良い場所なんじゃないかと思うようになりました。もっと多くの人にこの魅力を伝えたいという気持ちが膨らんできたというところですね。 あとは、決められたレールに乗るのが嫌だと思いつつも、心のどこかで実家の旅館のことが気になっていたんです。だから、思いきって実家に戻ってグランディア芳泉に入社しました。今から12年前、僕が25歳の時です」
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接客方法やルールが「言葉にしなくても分かっていた」時代
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