――かなりの方向転換をされたんですね。
山口「指標を部門ごとに細かく出して、
『この指標をクリアすることでこれくらい売り上げが上がって、給料もこれくらい上がる』というのも従業員に説明をしました。これにより、従業員の目線も揃っていったんです」
――巨人軍が福井県で試合をした際、グランディア芳泉に宿泊されていました。試合後に阿部慎之助監督が「20年間のジャイアンツ人生で一番良いホテル」とおもてなし力を絶賛されていましたね。
山口「おもてなしも『常に笑顔で』と言っても、人によって笑顔の認識が違いますよね。
そういう感覚的な部分については、AIを導入して笑顔を点数化しました。感覚的なこともみんなの認識をあわせていったんです。小さなことかもしれませんが、小さな改善を繰り返していくことで、お客様に満足いただけるサービスが提供できていると思います」
――笑顔の点数まで……。徹底されていますね。
山口「最初こそ大変だったんですけど、認識のズレがなくなったことで、より効率よく働くことができるようになりました。結果として従業員の給与や働きやすさにもつながっています。時間に余裕ができたことで、動画の撮影や編集をする時間も持てているのかなと思います。
妥協をしないで、失敗と成功を繰り返すうちにやっと組織っぽい会社になってきたっていうのが本音です」
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山口さんが経営するグランディア芳泉は、巨人軍のお墨付きだけでなく、
「観光経済新聞社」が実施した2024年度「人気温泉旅館ホテル250選」の投票理由別ベスト100でも、4項目でトップ10入りを果たしています。クセの強い動画を撮る“若旦那”は老舗旅館を改革する凄腕経営者でもありました。
【山口高澄】
福井県あわら市で創業61年目を迎える、老舗温泉旅館「
グランディア芳泉」の三代目。YouTube「
若旦那の勝手に福井観光大使 グランディア芳泉」などで、旅館や福井県の魅力を発信。独創的な経営アイディアや動画が話題になっている。
<取材・文/瀧戸詠未>