野村康太が初めてバラエティ番組に出演した『トークィーンズ』2月6日放送回が面白かった。韓国ドラマ好きの野村が、有名ドラマ作品の名シーンについて、男性俳優の仕草にいかにときめくのかを解説する。
パク・ソジュンなどの男性俳優にときめく理由として「前世が女の子だった」と説明していたのである。初バラエティ番組出演で撮れ高十分(実際、ネットニュースの話題に)な発言だが、この「前世」というワードが、櫻井海音の名演が光る『【推しの子】』(Amazon Prime Video、2024年)へと連想を広げてくれる。
『【推しの子】』は、国民的アイドル・星野アイ(齋藤飛鳥)を推すファンが、前世の記憶を持ちながらアイの子どもとして生まれ変わる物語だからである。幼いアクアは天才的な子役の才能を発揮しながら、たくましく育つ……。
成長したアクアを演じるのが、櫻井海音である。櫻井演じるアクアがはっきり姿を現すまでにほとんどかなりの尺が使われ、第1話終わりでやっと櫻井が登場する。ためにためたインパクトがある。
第2話冒頭、アクアが妹のルビー(齊藤なぎさ)と道を歩く場面が印象的だ。カメラは最初ふたりの後ろ姿を捉える。ビル内に入ると、露出が多く、光量が多い画面上、後景の外が白飛びしている。櫻井自体の輪郭もうっすら白みがかっているが、これが彼の存在感をより神々しいものにしている。
アクアはすでに俳優を辞め、映画監督・五反田泰志(金子ノブアキ)の元で助手をしている。ルビーはアイドルを目指している。芸能コースがある高校にふたりで入学すると、幼いときにアクアが共演したかつての天才子役・有馬かな(原菜乃華)と再会する。
このキャスティングが面白い。『泥濘の食卓』で櫻井が演じた那須川ハルキを追いかけ回す狂乱の幼馴染み・尾崎ちふゆを強烈に演じていたのが、原菜乃華だからである。
泥沼不倫ドラマからさらに一歩踏み込んで、原菜乃華と画面を共有する櫻井海音が、演技に開眼したように名演を持続させる。この名刺代わりの代表作を引っ提げた櫻井海音は、すでにネクストブレイク俳優枠のずっとずっと先のフィールドで堂々と金看板を掲げている。
<文/加賀谷健>