「女性が生きやすい社会は男性も生きやすい」29歳女優が語る、新作に息づく“フェミニズム”
俳優の橋本愛さん(29歳)が、柚木麻子による小説『早稲女、女、男』を原案に映画化した『早乙女カナコの場合は』に主演しました。主人公早乙女カナコのおよそ10年にも及ぶラブストーリーを軸に、女性の生き方や女性同士の関係を丁寧に描いた群像劇となっています。
橋本さんは、2010年の映画『告白』で注目を集め、以来15年間、映画やドラマなど幅広く活躍しています。その道のりには迷いや葛藤もあったと言いますが、「苦しいことも楽しみながら乗り越えたい」と今の想いを明かします。映画の公開を前に橋本さんのホンネに迫りました。
――矢崎仁司監督、そして柚木さんの小説のファンだったそうですが、早乙女カナコ役に決まった時はいかがでしたか?
橋本愛(以下、橋本):矢崎監督の作品に携わることができて、ファンとしてはまずうれしかったです。原作では各大学の“あるある”をあえてカテゴライズすることでリアルな女の子の姿を描いていましたが、映画では詳細な大学名は出さずに、リアルに“あるある”を描けそうだと思えたこともうれしかったです。あとは矢崎さんが原作の言葉を変えなかったので、それもうれしかったです。
――カナコはしっかりしている反面、恋には不器用なところもあったり、ご自身からみて共感するところはありましたか?
橋本:かなり共感するポイントは多くて、一番大きい点は男性恐怖症がカナコの中心にあり、この感覚はとても身に覚えがあるなと思いました。カナコは自分が性的な目線で見られることを忌避していて、いわゆる男っぽい立ち振る舞いを意識することで、そう見られないように回避しているんです。原作小説には過去のトラウマも描かれていますが、その感覚はわたしもこれまでの経験として近いものを感じましたし、そうしないと上手く生きられない感覚は自分とも上手く重なった気がしました。
また、女の子たちが対立するのではなく、カナコを中心に女性が女性に対してエンパワーメントしていく関係性がわたしはとても好きでした。だからといって「男なんて要らない」となるのではなく、恋愛も大事なものだからこそ真剣に悩んでしまうという、それぞれの葛藤が具体的に描かれているので、とても好きな物語だなと思いました。
――女性たちの群像劇といった印象ですよね。
橋本:わたしもそうなったらいいなと思っていました。タイトルこそ『早乙女カナコの場合は』ですが、登場人物それぞれの場合が描かれています。ちゃんと群像劇として立ち上がってきたのでよかったです。カナコが主人公として単独で成長していく物語というよりは、カナコも人に対してエンパワーメントしていく存在だったので、(わたしが演じることで)「大丈夫かな? ちゃんと魅力的な人間になっているかな?」という不安は常にありました。
――本作に関われてよかったなと思うことは何ですか?
橋本:フェミニズムの精神が核にある気がしていて、それは表立っては描いてはいないけれど、根づいているものなんですよね。そしてそれは女性だけのものと勘違いされやすいけれど、男社会で苦しむ男性の姿もこの映画ではちゃんと描かれているんです。それがわたしにはものすごくうれしくて。フェミニズムはすべてを包括するもので、女性が生きやすい社会は男性も生きやすい社会だと思うんです。そんなテーマを内に秘めて演じました。
――10年間の物語もよいですよね。幅広い層に響きそうです。
橋本:そうですね。大学生のシーンがメインではあるけれど、10代、20代、30代、それぞれの悩みの種類は変わってくる。それぞれの葛藤がちゃんと描かれているから、いろんな方が観てそれぞれの人生に刺さるような作品になっていればいいなという期待を持っています。

「男性恐怖症」の感覚に共感
フェミニズムは“男性も”生きやすい社会

【作品情報】
『早乙女カナコの場合は』
3月14日(金)新宿ピカデリーほか全国公開中
(C)2015 柚木麻子/祥伝社 (C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
配給:日活/KDDI
『早乙女カナコの場合は』
3月14日(金)新宿ピカデリーほか全国公開中
(C)2015 柚木麻子/祥伝社 (C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
配給:日活/KDDI