――年齢を重ねてきてきたことで感じる変化がありましたら教えてください。
石田:私は五十肩がひどかったです。もうだいぶ良くなりましたけど、長かったですね。
――その間は、何かされたのでしょうか。
石田:いろいろしましたよ。注射も打ちましたし、あちこち病院にも行きました。でも結局は時間です。時間が過ぎるのを待つしかありませんでした。何をやってもダメでしたね。あとは、一番はっきりと変化を感じるのは老眼です。本当に何も見えません(苦笑)。
――まったく同じで何か嬉しいです(笑)。そうした変化にはどう向き合っていますか?
石田:「なんくるないさ」の精神ですかね。「なんとかなるよ」と。そう考えていくしかないですよね。年齢の変化だけでなく、すべてのことにおいて。正解はひとつじゃないし、何かにおいて間違えたとしても、いくらでもやり直しはききますから。大変な時期があったとしても「なんくるないさ」です。あと、物を手放せるようになりました。
――物を手放す。
石田:本当に縁があったり、自分に必要な物とは、また出会うだろうと思うんです。もちろん写真とか、絶対に手放せないと思うものもありますけど、迷ったら、手放してもいいんじゃないかなと。
――手放してみたけれど、取り戻したものはありますか?
石田:手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』。あと銀色夏生さんのエッセイも好きで、何十冊と持っているので減らしたいと思って手放したのですが、結局買い戻しました。
――では経験を重ねてきたことで、あえて気を付けていることはありますか?
石田:娘たちの人生は、彼女たちのものだということは意識するようにしています。だから、彼女たちの考えを頭ごなしに否定しない。私が生きてきた時代や環境とは違うし、私もアップデートしなければいけない。「自分の時はこうだった」ということほど役に立たないものはないですから。
――たしかに。
石田:いらない情報ですよね。どうしても自分の意見を押し付けがちですが、それはなるべくしないように、たとえ本人たちが痛い思いをするときがあったとしても、本人たちに経験させることが大切かなと思っています。
<石田ひかり プロフィール>
1972年5月25日生まれ、東京都出身。1986年俳優デビュー。その後、映画「ふたり」、NHK連続テレビ小説「ひらり」、フジテレビ系ドラマ「あすなろ白書」などで主演を務める。ドラマ、映画、舞台、YouTubeなど、活動の場を限定することなく幅広い分野で活躍。2025年は『アンジーのBARで逢いましょう』のほか、『リライト』(6月13日公開)、『ルノワール』(6月20日公開)と出演作の公開を多数控える。
(C) 2025「アンジーのBARで逢いましょう」製作委員会
『アンジーのBARで逢いましょう』は4月4日(金)より新宿ピカデリー/シネスイッチ銀座 ほか全国公開
<取材・文・撮影/望月ふみ ヘアメイク/神戸春美 スタイリング/藤井享子(banana)>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi