
『ゆめの音色 ~music life~』(DVD付) (エムオン・エンタテインメント)
ここに、モヤモヤとした感情が生まれます。常識的な感情では、いまだにベッキーに粘着する世論のくだらなさに辟易しつつも、もしかすると、炎上しなくなって一番困るのはベッキーなのではないか、という推論が同時に成り立ってしまうからです。
つまり、世論が「もう許すよ、ベッキー」となった瞬間に、彼女への注目と関心が一気に消滅する可能性があるし、きっとそうなるでしょう。
だからこそ、この問題は徹底的に空虚なのです。ベッキーと川谷絵音が不倫したという事実自体も、そしてそれを総動員で袋叩きにする世論も、そして、それが理由で降板せざるを得なかった番組に復帰するというプロットも、関連するあらゆることが空虚なのです。
その広大な「無」に、10年という時間を経てもなお当時と同量の熱量が注がれている。これは尋常なことではありません。
ベッキーに何らかの才能(タレント)があったとするならば、そうした市民感情の秘部を無意識のうちに刺激したことなのかもしれません。
<文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter:
@TakayukiIshigu4