そもそも、女性向けの商品に健康情報を添えること自体は、消費者にとって有益な取り組み。例えばストッキングであれば、脚のむくみや冷えへの対策、肌への負担、快適な着用方法など、役立つ情報はいくらでも考えられます。
実際、アツギも中台紙を使った2007年からの取り組みで、一般的な女性の健康情報を発信してきました。今回の「性ホルモンとの上手な付き合い方」も、前述のとおり12話中11話は女性の健康情報です。
男性更年期を取り上げること自体が間違いなのではなく、問題は、ストッキングという商品とのつながりです。

画像はイメージです
とりわけストッキングやタイツは、メーカー側が思っている以上に、「男性が好む“性的アイテム”」とか「できれば履きたくないもの」というイメージを持っている女性は多いのです。それで女性側も敏感になっている現状があるでしょう。
今回、炎上の引き金となったX投稿が、「(ストッキングに男性更年期情報とは)激キモなんだけど!」「女性しか履くことを社会から求められてないクソみたいに繊細な布を買わされるだけでも腹立つのに」と書いていて、大変な共感を呼んだのは、そういう感覚だと思います。
一方で、今回の批判には、少し気になる点もあります。それは「女性のほうが大変なのだから、男性の更年期など知る必要はない」という方向に議論が進んでしまうことです。
女性の更年期に伴う不調が長く軽視されてきたことと、男性にも更年期に関連する健康問題があることは、両立する話です。どちらかのつらさを認めるために、もう一方のつらさを否定する必要はないでしょう。
そもそも男性の更年期は、女性の更年期と比べて認知度が低く、症状に気づかないまま悩む人もいます。女性がパートナーや家族の健康について知ることで男女が相互に理解し合うことができ、社会全体として不当な性差別や生きにくさを解消していくことは非常に有意義なことです。
今回の炎上では、アツギの情報発信のあり方に対する疑問と、男女間の不公平感に対する不満が重なり、議論が大きくなったようにも見えます。だからこそ、男性更年期の啓発そのものを否定するのではなく、誰に、どのような場面で、どう伝えるべきなのかを考える必要があるのでしょう。
<文/エタノール純子>
エタノール純子
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中