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小学生の親をドキッとさせる恐怖の言葉【シングルマザー、家を買う/64章】

娘が玄関で“闇取引”

 ちょっと違和感を感じたが、とりあえず家事をすませていると、静かに玄関のドアが開く音がした。そこには、忍び足で入って来たじいじが2440円を手渡している闇取引のような光景が! シングルマザー、家を買う/64章_2「ちょっとまったぁぁぁぁぁぁ!」  この時点で22時半にはなっている。どうやら、娘はみまもりケータイに登録してあるじいじにトイレから電話をかけ、2440円を持って来てくれと頼んだらしいのだ。じいじは孫にはなんでもしてあげるほど甘い。「それはかわいそうに」と思い、少ないお小遣いから出してくれたらしい。  しかし、これでは娘は反省しない。  どんなことがあっても、じいじに頼れば解決すると思われちゃたまらない。今後ボケていくだろうじいじからお金をもらうようなことになったら大変だ! 変な男にひっかかった娘から「じいじ~、お金貸して~」なんて言われたらホイホイ渡しそうなじいじも怖い。  これは早く芽を摘まなくては! と思った私は、じいじに「孫のお願いでも何でもいうこときかないで! とくにお金はダメ!」と釘をさし、お金を返すと「ごめんよお~。娘ちゃんが頼ってきたからさぁ~」とバツが悪い顔をしつつ家に戻っていった。

小学生の切り替え力はスゴい

 そして私に思い切り怒られることを察した娘は、もうすでに顔が泣いている。私に「そこ座れ~!!!」と言われ、ちんまり正座した娘に「何が悪いと思う?」と聞くと、 「ひっっじいじにおかねを……もらったこと……」  そうだな。でもそれだけじゃない。「あとは?」と聞くと、 「うっっしゅうきんをぉぉ、いまいったことぉ……」その通りだ。  そのあと「ごめんなさい~!」と言った娘はそのまま泣きじゃくりながらカラの集金袋を抱きしめたまま布団に潜り込み、一瞬で寝た。すごい、こんな状況でもすぐ寝るんだ。 「ちょっと怒りすぎたかな」と反省しつつ、“ママに頼むと怒るからじいじにこっそり電話をしてお金をもらう”という悪知恵を働かせた9歳の娘が、これからもどんどん悪知恵を働かせるに違いないと確信したのだった……ホント、子育てって難しい。  しかし、学校の決まりは決まり。家中の小銭をかき集めやっとの思いで2440円をつくり、抱きしめた集金袋にそっと入れたのだった。  次の日の朝、お金が入った集金袋を見た娘から「ママ、ありがとう」という一言を期待していたが、何事もなかったようにお金を確認し、ランドセルに入れた娘は「あ、今週コナンの映画やるからビデオ録画しておいて~!」とニッコニコで言い放ち、颯爽と学校に行ったのだった。  あいつ、絶対また同じ過ちを繰り返すだろうな……。小学生の切り替え力には、完敗である。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky【ワタナベチヒロ プロフィール】 漫画家、イラストレーター。お金にまつわる役立つ知識をオールマンガで1冊にまとめた著書『お金に泣かされないための100の法則』(ファイナンシャルプランナー山口京子先生が監修)が主婦と生活社より発売中。 ※このエッセイは月ごとに配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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