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佐藤健、柄本佑、向井理。“令和のイケメン”像を冬ドラマに見た

美しさよりも危うさで引き付けた「安藤政信」

 2月期、最も注目されたドラマ、日曜劇場『テセウスの船』で主人公(竹内涼真)を追いこんでいくみきお少年の未来の姿を演じた安藤政信も、20年くらい前、演技も巧いイケメンとして人気だったが、イケメン売りせず、マイペースで芸術性の高い映画に出ていた。いまも年をとっても圧倒的に美しい顔立ちであることは隠しきれないながら、『テセウス』では美しさよりも危うさが勝ってしまう職人技を見せた。
 よく、素材がよくても服やメイクに構わない人より構う人のほうが美しく見えるというし、歌舞伎や宝塚の俳優が、自分と違う性を演じると客観的な視点によってそれらしく見えるという。“イケメン”もナチュラルボーンより、意識して演じることで理想像に肉薄できるというものなのかもしれない。

佐藤健・向井理どちらにたどり着くのか「横浜流星」

 イケメンとしてのあり方を強烈に提示してくれた佐藤、柄本、向井のほかで気になったのが、横浜流星だ。『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(日本テレビ)の横浜は、2019年、最も注目された若手イケメンのひとりで今年も順調に活躍している。ドラマでは心理学を学び、清野菜名演じるトラウマを抱えた女性に催眠術で、正義の味方・パンダに変身させるという謎の行動をとる役。  操っている女性に、優しい表情や声で語りかけるところなどは、やっぱり“イケメン”を意識している感じであった。が、得意のアクションも見せ、ドラマの終盤では怪優・佐藤二朗相手に激しい表情も見せ、たくさんの引き出しを開けてがんばっているところに好感がもてた。彼がいつか同じ「仮面ライダー」出身の佐藤健の域まで行き着けるか、向井理のように“イケメン”から離れたほうに向かうのか、これからが楽しみである。もっとも、どっちもできるのが一番いいと思うけれど。

大人顔負けの美少年像を演じる「柴崎楓雅」「岩田琉聖」

 忘れてならないのが美形の子役たち。『テセウスの船』の魔性の小学生みきおを演じた柴崎楓雅(しばざき ふうが)。最後の最後は霜降り明星のせいやに持っていかれたが、最終回直前の活躍は、紅い唇で、残酷なことを平気で言う、ゾクゾクする怪しさは忘れられない。
ハマナカニット 岩田 琉聖

(画像:ハマナカ「mocco moco and knit」リリースより)

 また、『麒麟がくる』でいずれ風間俊介が演じることとなる徳川家康の幼少期・竹千代を演じる岩田琉聖も、幼いにもかかわらず、しっかりした口調で、家康のスケール感を演じる堂々としたところに目が離せなかった。孤独に負けない強い顔つきがいたいけで。柴崎楓雅と岩田琉聖は大人以上に、大人顔負けの美少年像を意識して演じることのできる名子役だなあと感心するばかり。やっぱりイケメンも顔だけでなく演技派でないと生き残れない時代なのである。 <文/木俣冬> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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