バービー「デブ、ブス、処女という女芸人の役割に違和感」清田隆之らと語る笑いとジェンダー
今までに1200人以上の男女から恋愛相談を受け、恋愛や性差の問題について発信し続けてきた恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さんが、自らが抱える「男らしさ」への葛藤と正面から向き合った本格的ジェンダー・エッセイ集『さよなら、俺たち』を刊行しました。
刊行を記念して、お笑いコンビ・フォーリンラブのバービーさん、フリー編集者のおぐらりゅうじさんをゲストに招き、代官山 蔦屋書店が主催したオンラインイベント「清田隆之×おぐらりゅうじ×バービー このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ――2020年の男らしさの行方と現在地」のトークルポ、後編です! 男性社会であるお笑いの世界で「女芸人」としていじられることへの違和感と同時に抱く、「お尻を出して笑ってもらいたい」という性(さが)……バービーさんが考える、お笑いとジェンダーとは?
【前編はこちら】⇒バービー「『嫁』という言葉を嫌う人がグッと増えた」。清田隆之らと語る“男と女の現在”
おぐらりゅうじ(以下、おぐら):17年に始まった『女芸人No.1決定戦 THE W』について、バービーさんにお聞きしたくて。「女芸人」と一括りにされて、ある種のキャラクターを演じているとはいえ、「デブ」や「ブス」といった言葉が平然と使われていることに嫌悪感を持つ人が今はたくさんいますよね。『M-1グランプリ』は男芸人に限定していないのに、なぜ女だけのお笑いコンテストが存在するのだろうか、と。
バービー:17年に始まった当時は、まだ本音は言えない状況だったけれど、今はこうやって違和感や嫌悪感についてちゃんと話せるようになった。この4年間の社会の意識の変革って大きいですよね。
おぐら:『THE W』は第一回大会からずっと見ていますが、「デブ」「ブス」「処女」といったパーソナルなことをネタにしている女性芸人がとにかく多い。出場者はどこまでジェンダーを意識していたんですかね。
バービー:やっぱり、芸人として抜きん出なきゃいけないという舞台だからこそ、「デブ」「ブス」「処女」という、「女芸人」として求められている役割を全力でまっとうしてしまったんだと思うんですけど、後ろめたさを感じているかどうかはわからないです。やっている本人たちの感覚は麻痺していると思います。
おぐら:男性芸人の中に混じって存在感を発揮するためには、自らの容姿をネタにすることが武器になるというのは現実としてありますが、一方で「女芸人はこうあるべき」という男性社会の抑圧がそうさせた部分も大きいですよね。
バービー:確かに。物議を醸しながらも、何年も続いているのはすごいですよね。社会のジェンダー意識が変わっていく中で、今後、女性芸人側の意識がどう変わっていくのかは気になります。
清田隆之(以下、清田):バービーさんはPEACH JOHNの下着のプロデュースをしてるじゃないですか。それを告知したTwitterに、「俺の“手ブラ”じゃダメかな」というセクハラリプがきて、「そのコメントをおもしろいと思ったけれど、どう反応していいのかわからず困った」という話を去年取材で一緒になったときにしていらっしゃいましたよね。
バービー:そうそう。私自身はおもしろくても、それを見ている第三者に対してどうパフォーマンスしていいのかわからなくて。私は未だにあのコメント好きです(笑)。
清田:自分も正直笑ってしまったんですが……でも「おもしろい」と言ってしまうと、セクハラを容認するようなリアクションにも取られかねないから難しいですよね。ジェンダーについてユーモアを込めて語ったり、笑いにしていくこともあっていいと思うけれど、そのさじ加減や態度の取り方ってものすごく難しいなと感じています。バービーさんはそのあたりどうお考えですか?
バービー:私、ロケで漁師町に行ったりすると、「おめぇ、いい赤ん坊を産みそうだな」とか言われるんですよ。すごくケツがでかい女として褒められるなら、私としては嫌な気はしないというか。「そうでしょ!(お尻を)見て!」って(笑)。
おぐら:うちの実家は埼玉の郊外にあるのですが、地元のおじさんたちはいまだに「姉ちゃんケツ大きいな」とか平気で言うんです。で、ねじれがすごいなと感じるのは、そういうセクハラ発言をバリバリする人が無茶苦茶優しかったりするんですよ。「あいつは学がねぇからさ、俺のところで雇ってやってるんだ」みたいな、能力至上主義ではない人付き合いをしていたりして、もしかしたら博愛なのでは?とも思わせる。
