「最初に夫がUFOを目撃してから消えるまでは数十秒くらいの短い時間でした。彼は『せっかくUFOを目撃したのに……』と証拠を残せなかったことを大変残念そうにしていました。その後、私は隣で寝ていたんですが、夫は再び現れることを期待して成田に着くまで一睡もしなかったそうです。まあ、UFOは結局現れなかったんですけどね」
実は、夫はマニアというほどではないですが、以前からオカルトや都市伝説が大好きで『やりすぎ都市伝説』(テレビ東京系)も欠かさず見ていたほど。この一件でUFOにハマってしまったらしく、ヒマさえあればUFO関連のサイトや動画をチェックするようになったといいます。
「帰国後、夫は友達や会社の仲のいい同僚にUFOを見たことを話したみたいですが、『きっと見間違いだよ』って信じてくれる人がいなかったみたいなんです。UFOに強いこだわりを見せるようになったのは、そのことへの反発もあったようです」
ただし、久々に会ったという夫の大学時代の友人は、疑う様子もなく興味津々な様子でUFO目撃談を聞いてくれたそうです。
「その方は能登半島の出身で、地元にロケット以外にもUFOや宇宙人関連の展示物にも力を入れた『コスモアイル羽咋(はくい)』って博物館があると教えてくれたんです。夫はすっかりその話に食いついちゃって、来年は北陸旅行にしようって計画を立てていたんです」

UFO関連の展示物も多い「コスモアイル羽咋」(石川県羽咋市)
ところが、そのタイミングで玲子さんの妊娠が発覚、訪れることができたのは5年後のことでした。それでも屋外にはNASAで実際に使われたロケットが展示。館内にも宇宙船や月面探査機などが飾られていて、子供も喜んでいたそうです。
「夫も“墜落したUFOから回収された宇宙人”という模型を見て、『有名なロズウェル事件のやつだ!』って大騒ぎ(※1947年、米国ニューメキシコ州ロズウェル郊外であったとされるUFO墜落事件)。博物館のある町自体、UFOを目撃したことのある人が多いらしく、町の非公式ゆるキャラもそのまんま宇宙人。あまりの夫のテンションの高さにちょっと引いちゃいました」

(画像:宇宙科学博物館コスモアイル羽咋による「宇宙人サンダーくん」LINEスタンプ)
ちなみにUFOはヨーロッパ旅行から帰国便で見て以来、一度も目撃していないそうですが、この夏話題になった火球を夫が目撃。「UFOかも!」と言い出し、冷めかけていたUFO熱が復活してしています。
「夜、日課のようにマンションのべランダに出ては空を眺めています。いちいち付き合うのは面倒なので放置していますけど、コロナで大変な時期にそんなことではしゃいでいられるんだからウチはまだ平和かなって(笑)」
いい年して……と冷ややかに見る人も多いでしょうけど、こういう夫の子供っぽい一面も案外夫婦が上手くやっていく要因のひとつなのかもしれませんね。
―シリーズ「
怪談・ゾッとする話/不思議な話」―
<文/トシタカマサ イラスト/カツオ>
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トシタカマサ
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。